「再生繊維」が本質的にサステナブルではなく、「対処療法」に過ぎない理由
再生繊維を作る前に、ペットボトルを規制すべき
「それでは、お前の考えを言ってみろ」と言われそうなので、私の考えを述べたい。そもそも、ペットボトルの海洋不法投棄が問題なのであれば、飲料メーカに対しペットボトルを使った飲料水を販売する場合、「一本につきいくら」という具合に環境税をかけるなど、ペットボトルの生産を減産する方向に舵取りをすべきだと思う。
実際、アルミ缶や紙でできた飲料水は山のように販売されているわけだから(私は、これらの原料がどれだけ環境負荷をあたえるのかは分からないが)、環境負荷の少ない素材の使用をメーカに義務づけ、どうしてもペットボトルを使いたい場合は、タバコやお酒のように、環境負荷の重さに応じて税金を掛ければ良い。
これが、本質的な問題解決の考え方である。
さらに、アパレル産業の化石燃料を使ったアクリルやポリエステルが環境破壊の原因であるならば、需要を100%とすると日本では200%、世界中で130%の水準にある過剰生産にこそ手を入れるべきだと私は思う。実際私は、この過剰生産に対して在庫税をかけるなどの政策提言をし、その有効性についても詳細を説明しているのだが、政府側からもここに手を入れようとする動きは全く見られない。
そもそも環境負荷についていえば、素材原料だけでなく、生産工程の様々な多段階でCO2が排出されている。さらに、世界で30%も供給過剰となっている繊維製品を燃やすこと(このなかには再生ポリエステル原料の衣料品も含まれているだろう)による資源の無駄遣いと炭素排出こそ環境破壊の最大の原因である。したがって、需給バランスをどのように調和させるのか焦点となるはずで、とくに日本では100%もの過剰生産である現実を目の当たりにした今、取り組むべきは「生産量」の問題であるはずだ。ところが、ここに対して国として取り組むような話は聞いたことがない。
このように、私たちは課題が複雑になればなるほど、その構造を紐解くことを忘れ、目の前にあるものやメディアが騒ぐものに気持ちが向かってしまい、本質的な課題が見えなくなってしまうわけだ。分析力は一朝一夕に身につくものではないし、ここではアパレル産業の課題にフォーカスして話を展開しているため、この分析力や問題解決力を培う作法などは別の場に譲りたい。
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プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
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