ChatGPTの衝撃!アパレルに起こす「接客大革命」と競争優位性への影響とは

河合 拓
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日本人の「49%」の仕事が奪われるどころではない衝撃

XH4D/istock
XH4D/istock

 2015年に、野村総研とオックスフォード大学が、AIがあたえるインパクトについて衝撃的なレポートを発表したのを覚えているだろうか。日本人の実に49%はAIに仕事を奪われる、というものだった。

 しかし、このChatGPTの衝撃を鑑みると「49%どころではない」ことがわかる。様々な技術を組み合わせれば、私の感覚値では80%以上の人間は不要になるのではないだろうか。リスキリングなど、「学び直し」が盛んではあるもの、少なくとも、MMT (現代貨幣理論)からアパレル産業の在庫問題までディスカッションできる人材はアパレル業界には皆無だろうと思う。

 私がMMTにこだわるのには理由がある。それは、服が売れない理由をデザインや需要予測の責任だと思い、バブル時代からなんら変わらぬ仕事のやり方を続けているからだ。今、服が売れないのは過剰供給も大きな要因だが、これとて国民の所得が倍になれば多くは解決する可能性もある。MMTを主張する学者は、その財源はインフレターゲット以内であれば貨幣を市中にばらまいても構わないと説明する。いわゆる国のP/Lであるプライマリーバランスこそが諸悪の根源であるという主張だ。服が売れない理由を、ここまで大きなマクロの視点で考えている人が何人いるのかということだ。分析すればするほど、解決策はMMTに落ち着くのである。

 もちろん、ChatGPTはMMTとアパレルの課題を紐つけるほどの知性はまだ持ち合わせていない。ただ、これも時間の問題で、調達インフレと販売デフレのサンドイッチ現象に悩まされている産業は経済政策との連関性にまで遡らなければ、「はい、海外にいって稼いでください、日本はダメです」という無責任な提言でおわってしまうことになる(私もその一人だった)AIがここまで驚愕の進化を遂げると、人間の知性レベルはマクロ経済と業務オペレーションの連関性まで見える分析力が必要となり、感覚的には日本人の80%以上が職を失うといっても、私はなんら違和感を感じない。

機械は考えていない! では人間は考えているのか?

 私は自分のチームの技術者とディスカッションを繰り返した。彼は、印象的なことを言った。「機械は考えていないのです。機械に組み込まれた数式(アルゴリズム)に従って答えをだしているのです」と。しかし、数多くの企業コンサルティングを行ってきた経験からいって、果たして「考える」ことで出されるアウトプットと、「数式」からだされるアウトプットのどこに違いがあるのだろうかと考えた。

 人間は考え、判断をするというが、私の知る限りほとんどのビジネスパーソンは自らジャッジをすることができない。それは度胸かもしれないし、論理性から生み出される精度かもしれなければ、再現可能なメソドロジーの知識、脳を使ったトレーニングの回数かもしれない。いずれにせよ、私は高度なアルゴリズムから生み出されるアウトプットの裏に「生身の思考」があるかないかにそれほど重要な意味を見いだせないのである。いわゆるメタバースの本質を私はここに見いだすのである。

 

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