サステナファッションは非現実的 アパレル産業がすべき本当のSDGsについて考える

河合 拓
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経済活動とSDGsは両立しうるか

 しかし、考えてみれば、格差社会は何百年も前からあり、格差社会は資本主義の功罪とも言えるものだ。さらに、私たち消費者の「小さな努力」は、ほとんどSDGsの気候変動に寄与しないようだ(気候変動の影響は、二酸化炭素ではないという議論もある)。経済産業研究所のレポートによれば、二酸化炭素排出量のトップは20年で中国が一位で30.7%、米国13.8%EU7.9%で、日本はわずか3.2%だ。

 つまり、私たちが資本主義下で経済活動を行えば、競争は益々苛烈になり、また競争は富の奪い合いを生み出し戦争を起こす。結果、地球環境はますます破壊されてゆくということになる。

 特に、「環境破壊第2位の産業」と言われるアパレル産業では、こうした問題を真正面から正しく受け入れるべきだ。先々週私は、H&Mがラナプラザ倒壊事件という悲惨な貧困問題を経験したにもかかわらず、限界を超えたコストプレッシャーで、バングラデッシュの工場を赤字操業させていたという報道に関する論考を書いた。同社は、SDGsの最先端を走っていると思われ、あのファーストリテイリングも参加しているHigg indexに真正面から取り組んでいるように振る舞っていただけなのだ。そして残念ながら、これに関する記事は、日本ではほとんど話題にならなかった。

 ここからも、私たちの経済活動とSDGsは、両立しないということがおわかりだろう。

気候変動で絶滅した恐竜と同様
人類は行き過ぎた経済活動で絶滅する

  Sustainable (サステナブル)とは、持続可能という意味だ。だが、これは、私たち人類の経済活動と環境との共生が持続的に可能になることを意味するわけだが、本当だろうか。

 すでに、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)は、これまでの予測よりも10年早い2021-2040年に世界の平均気温上昇が産業革命以前から1.5度以上に達するとの新たな予測を発表した。今後も全世界で熱波の増加や温暖な季節の長期化が進行し、豪雨や干ばつなどの災害、海面上昇などの地形の変化が深刻化するという。報告書は、温暖化の要因が人類の活動にあることは明白だと断言した。

 つまり、私たちの活動は人類死滅へのスピードを下げているに過ぎず(といったら、不快に思う方がいるのかもしれないが)、「これまでの予想」という言葉からも、私たちは気候変動を止めることができずにいる。それは、巨大隕石が地球に激突し恐竜が死滅した(と推定されている)ように、私たち人類も、私たち自身の経済活動によって死滅すると考えるのが自然ではないだろうか。

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