【必読!】凄腕コンサルが教える!財務3表から仮説を立て企業業績を分析する方法

河合 拓
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キャッシュフローの基礎知識と分析手法

Melpomenem/istock
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 次に、キャッシュフローについて解説すると、キャッシュフローとは現金の入りと出を表したもので3つに分かれている。営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローである。

 営業キャッシュフローとは、仕入れた在庫を販売するなど、営業活動によって得られる現金の収支である。営業キャッシュフローは、商品販売でプラス、商品仕入れでマイナス、人件費でマイナス、経費でマイナスとなるため、営業活動トータルで現金収支がプラスかマイナスかがわかる。

 投資キャッシュフローは固定資産の取得や売却による現金収支を示す。例えば、新しいビジネスをするためデジタル投資をすれば、初期投資分のキャッシュアウトがマイナスに作用する。営業キャッシュフロー段階では、デジタル投資を法定耐用年数に合わせて単年度ごとに減価償却費として費用化されるが、実際のキャッシュアウトを伴わないため、その費用は足し戻されてキャッシュフローにはポジティブに働く。また、株式などを取得した場合、その株式の時価評価をしてプラスになれば投資キャッシュフローはプラスになる。

 最後に、財務キャッシュフローとはお金を金融機関などから借りる場合だ。お金を借りれば財務キャッシュフローはプラスになるが、借りたお金は返さなければならないため、返済が始まればキャッシュフローはマイナスになる。

 このように企業の現金の入りと出は3つのキャッシュフローで見てゆく。例えば、上場していなくとも、中小企業でも基本的な考え方は同じだ。

 そして、営業キャッシュフローが100あって、投資キャッシュフローが10のマイナスだった場合、その企業が自由に使えるお金は100-10で、90となり。これをフリーキャッシュフローという。このフリーキャッシュフローがプラスの場合、基本的には金融機関からの借入は不要だ。だが、例えばM&A(合併・買収)などで自社のフリーキャッシュフロー以上の現金が必要な場合、金融機関からお金を借りなければならない。そのため、大型買収など過大な投資をする場合、フリーキャッシュフローがプラスでも決して安全とはいえない。

 このように、財務3表だけでは、その会社の病巣が正しく見えないため、類推を通して「PLがこうなりBSがこのように動いていて、CFがこうなっているので、おそらくこういうことが起きているのではないか」ということをお金の立体的な流れと、アパレル事業という特殊性を鑑みて仮説を作り上げることが大事なのだ。

 そして、私の経験上、この過程を経てできた仮説はほぼ間違いなく、自分が思いつくことは事業主も同じことをやっている可能性が高いということがわかるのである。

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