【必読!】凄腕コンサルが教える!財務3表から仮説を立て企業業績を分析する方法

河合 拓
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blackred/istock
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 では、正しい管理手法は何か?

 店舗貢献利益(店舗管理可能利益)の合計値が販管費を超える(営業利益がプラス)値を「貢献利益率」とし、この値を割った店舗を赤字店舗、この値を超えている店舗を黒字店舗として管理すべきなのである。例えば、販管費の合計が300億円とし、可能であれば販管費から変動費を引いて固定費のみにする。仮に販管費のうち固定費が250億円だとしたら、店舗貢献利益の総合計が250億円以上の場合の店舗貢献利益率を10%12%と見て店舗収益を見る。

 「結局同じことではないか」と言う人もいるかもしれないが、実際に店舗収益を管理する場合、店舗営業利益で収益管理をすると、前述のように固定費負担の大きい店を撤退した場合、さらに多くの店舗が自動的に赤字になり、現場は混乱することになる。ならば、販管費の総合計を貢献利益率とし、その貢献利益率を割った店舗を赤字と判断して撤退店舗とし、さらに残った店舗貢献利益率のブレークイーブンを新たに設定して考えた方が間違いが無い。また、販管費の固定費をブランド別に分割すれば、ブランド別に正しい貢献利益率も見えてくる。現場にとっては、非常に分かりやすい指標となる

間違いだらけのPLの見方

 こうした、4KPIに加え、全店舗別PLは一般に上場企業であっても公開されることはない。上場企業であっても、損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフローの、いわゆる財務3表がせいぜい得られる指標だが、それらは各事業をすべて併せたものでとても分析に足るものとはいえない。ときに、PowerPointの別資料でブランド別、事業別、エリア別などの指標がでるが、企業側は自社の弱みを見せることはしない。だから自社にとって都合の良い情報しか開示しないため、本当に知りたい情報は見ることはできない。IR説明会の質疑応答についても当たり障りのない解答がほとんどで、さらにやり取りをして深掘りすることはできない。

  さて、企業が破綻する時は、損益計算書の赤字が続く時ではなく、資金繰り(キャッシュフロー)が行き詰まる時である。解説しよう。

 アパレル企業が破綻するのは、商品が売れずに在庫が積み上がり、代わりに現金が減少し、運転資本(企業が仕入をしたり、従業員に給与を払ったりするためのお金)がなくなるときである。このとき、現金が山のようにあれば、仮に6期連続赤字でも企業は倒産しない。また、現金がなくとも、現金を借りることができれば借金は増えるが、現金も増えるので企業は破綻しない。

 つまり、「危ない企業かどうか」をみるには、現金を見れば良い。具体的な事例をだして解説したいところだが、筆者の意図することとは違う方向に噂などが広がるのを避けるため、架空の企業で解説することをお許ししてもらいたい。読者は、本稿の内容を理解して、具体的な企業に当てはめて分析してもらいたい。

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