人口減少が顕著なエリアにある、老朽化した食品スーパー(SM)。一般には撤退するケースも各地で散見するが、あえて建て替え・増床に踏み切ったのが、兵庫県豊岡市にあるさとう(京都府/佐藤総二郎社長)グループのSM「ミニフレッシュ但東(たんとう)店」だ。さらに市場が縮小するとみられるなか、勝算はあるのか。現地に足を運び、その取り組みをレポートする。
65歳以上が4割以上、超・高齢化地域
兵庫県北部に位置し日本海に面する豊岡市は、西日本屈指の豪雪地帯として知られる。人口の推移に目を向けると、国内にある他の多くの市町村と同様に、減少している。
国勢調査によれば、2020年時点での人口は7万7489人。15年調査時の8万2250人からは約5.8%減っている。
その豊岡市で、最も人口減少が顕著なエリアが、今回とり上げる但東町だ。20年調査時は3745人で、15年の4255人と比較すると、わずか5年の間に約12%も少なくなっている計算だ。
高齢化率(全人口に占める65歳以上の比率)も高い。総務省「人口推計」によれば、日本の1 9 年時点の高齢化率は28.4%。これに対し、豊岡市は32.7%(豊岡市推計)と約4ポイント(pt)、さらに丹東エリアについては42%台(同)と約14ptも上回っている。国全体が丹東エリアの水準に近づくのは45年以上も先のことで、まさに日本の未来の姿がここにあるといっても過言ではない。
そんな但東町において、長らく営業を続けてきたのが旧「ミニフレッシュ但東出合店」だ。運営するのは京都府福知山市に本部を構える、さとう(佐藤総二郎社長)グループのさとうフレッシュフロンティア(京都府/佐藤総二郎社長:以下、さとう)である。
オープンは1992年。売場面積は275㎡とコンパクトな規模ながら、長らく地域の生活を支えてきた。しかし急速な人口減少に伴い、売上高は下降傾向にある。改装により、一時的に回復した時期もあるが、総じて右肩下がりの状態が続いてきた。
店はさとうグループでは数少ない木造建築で、30年が経過し老朽化が進んでいた。厳しい環境から考えて、一般には、最低限の手直しで「現状維持」、もしくは収益性を考慮すれば「撤退」も検討するケースといえるだろう。
商圏人口はわずか約1600人
こうした商圏環境であるにもかかわらず、さとうが選んだのは、そのどちらの道でもなかった。
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