コロナ禍で消費者の購買行動が大きく変化し、食の分野でもEC化率が高まる中、小売業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)は大きく前進する機運が高まっている。小売業はDXをどのように進めるべきか、その「つまずき」の原因と解決策、DXの推進によって企業の生き残りを図る戦略を、True Data(東京都)の米倉裕之社長が語る。
DX成功に不可欠な3つの要素とは
──True Dataでは、DXをどのようにとらえていますか。
米倉 DXとは、事象をデータで客観的にとらえ、私たち人間の感性や知識、経験をデータによって補完することで、より速くスムーズな意思決定やアクションにつなげることです。そのためには、社内外で蓄積されているデータ、データ分析の道具となるテクノロジー、「どのようにデータを活用するのか」というノウハウの3つが必要です。True Dataは「データと知恵で未来をつくる」をパーパス(存在意義)に掲げ、DXに不可欠なデータ、テクノロジー、ノウハウの3つをワンストップで提供しています。
──コロナ禍を機に消費者はどのように変化していますか。
米倉 コロナ禍では、消費者の価値観が変化し、住まい方や働き方など、その生活様式も大きく変容しました。たとえば食品スーパー(SM)では、コロナ前と比べ来店頻度が減少する一方で、客単価が増える傾向にあります。外食控えが長期化する中、オンラインで注文するフードデリバリーサービスやテイクアウトが普及し、中食の領域でオンラインの顧客接点が増えてきました。今後、ウィズコロナ・アフターコロナで消費者がどのように変化するのかはまだ見通しづらい状況です。
このように急激な消費者の変化を人間の感覚だけで精緻にとらえ、理論的に整理したり、仮説を検証したりすることは困難です。判断の裏付けとしてデータを効果的に活用できれば、組織の意思決定や具体的なアクションにつながりやすくなるでしょう。
──人口減少傾向にある日本ではロイヤルカスタマーを増やすことも経営課題となりつつあります。
米倉 人口が減少傾向にある市場では、自社のファンを増やし、育てることが収益性の向上や安定した経営基盤の確立につながります。
消費者は、商品・サービスを認知し、比較・検討して、来店して購入するまでのプロセスと、購入した商品・サービスを愛用し、継続的に来店して再び購入するまでのプロセスの2度にわたって店を評価します。小売業は、顧客とのエンゲージメントを強化し、「選ばれる店」から「選ばれ続ける店」になることを意識すべきです。
攻めのDX、守りのDX
──そうした中、小売業におけるDXの現状をどのようにみていますか。
米倉 DXには、
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