生協宅配、コロナ特需の終焉!? 成長のカギを握るDX戦略の今
デジタル活用の実験が続々
全国展開を開始した成功事例も
こうした宅配事業の将来成長への危機感を背景に20年3月、日本生協連は「DX-CO・OPプロジェクト」をスタートした。
組合員の「あたらしいくらし」の実現と、生協職員の働き方改革をデジタル活用で推進するという主旨のもので、すでに数々の実証実験を実施。その成果が徐々に見え始めている。ここで直近の進捗状況を紹介しよう。
今年8月、コープ東北サンネット事業連合(宮城県)では、コストカットや環境負荷軽減、組合員の利用のしやすさを高める目的で、「宅配カタログ配布効率化」の実験を開始した。これは、AIの活用によって、過去の注文履歴からの個々の利用状況に応じて、複数あるカタログ中から配る構成を変化させるというもの。実験の結果、一部のカタログでは配布部数が実験開始前より50%削減するという効果が出ている。
またコープ東北サンネット事業連合は、レシピを選ぶと必要な食材がまとめて注文できるWebサービス「コープシェフ」も21年5月にリリース。11月初旬からは順次、希望する全国の地域生協でも同Webサービスの展開を開始している。
東海コープ事業連合(愛知県)では、今年6月にコープあいち(愛知県)でAIによる配達コース最適化の実証実験を行った。結果、配送トラックの走行距離を約10%、職員の総配送時間を約15%削減する成果が得られている。これを受けて同事業連合は、配送条件をより現場に即した内容に変えて効果を測定する次の実験のステップに移行している。
生協陣営は「DX-CO・OP」プロジェクトを、宅配事業の今後の可能性を拓く重要施策と位置づけ、今後も成功事例から順次、全国の生協への導入を進めていく。
生協が進めるDXについては、利便性の向上や事業経営の効率に限らず、デジタルの力で生協の事業や活動の価値を高められるかがポイントになる。地域での新たなつながりやデジタル弱者の高齢者への配慮も含めて生協らしいデジタル改革をどう打ち出せるか。アフターコロナに向けてDXがカギを握っている。