第35回 ウィズコロナ時代、「モノが売れる」3つの理由とは

西山貴仁(株式会社SC&パートナーズ 代表取締役)
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モノが売れる3つの理由

この「モノが売れる3つの理由」は、コロナ禍以前から主張してきたが、今回のコロナ禍でより明確になったと思っている。では、その3つとは何か。

①必要なもの
シャンプー、歯ブラシ、化粧品、洗剤、卵、牛乳、しょうゆなど生きていくために、普段の生活を送るために必要不可欠なものであり、無くなれば補充するものでもある(図表3)。ドラッグストアが成長し続けているのはこの生活に必要なものを常に拡充し、生活者のニーズを取り込み続けているからに他ならない。

②心躍るもの
洋服、アクセサリー、デパ地下のスイーツ、新車など生きていくためにすぐさま必要ではないものの、それを身に着けた時の自分、プレゼントした時の相手の笑顔、新しいライフスタイルこういったイメージが浮かぶことで財布を開く。百貨店やショッピングセンター(SC)は、この分野を主に提案してきたはずだが、いつしか滞り、売上が低迷し顧客からの支持を失ってきている。

③課題を解決するもの
人々が口にすること、例えば、最近、不眠で体調が優れない、加齢で肌にハリが無くなってきた、お腹周りの脂肪が気になる、冬を暖かく過ごしたい、ゴルフで100を切りたいなど理由はどうあれ、皆それぞれ色々な悩みや課題を抱える。この解決のためには人はお金を払う。

たとえば「2ヶ月で筋肉質の体型を手に入れることができる」ならそれなりの金額を払うだろうし、冬を暖かく過ごしたいからヒートテックを買う。決してヒートテックが欲しいのでは無く、「暖かく過ごしたい」という課題を解決することにお金を払っているのである。

この3つが「モノの売れる理由」だが、今、店頭にどれほどこの3つが並んでいるだろうか。

モノを無理矢理売ろうとする行動

ドラッカーは言った、「マーケティングとはセリング(売り込み)を不要にすることだ」と。この3つのテーマを考えれば売れるものは自ずと決まる。しかし、SCや百貨店の店頭では、常に販促や接客などのセリングが行われている。これらの目的は、買う気にさせる、買わせる、売り込む活動に他ならない。ポストコロナ、客足が戻ってきた時、改めてドラッカーの言葉と共に売れる3つの理由を確認して欲しい。

 

西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。201511月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒

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