カインズ、本社敷地内に建てた「戸建て住宅」がSPAをさらに推進する理由とは

2021/09/23 05:55
    阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
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    総延べ床面積200㎡超、ハウススタジオが可能にすること

    そこで今回カインズは、本庄早稲田駅前の本社敷地内に3棟からなるハウススタジオを建設した。

    冒頭で紹介したA棟は、唯一の2階建てのハウススタジオで、水道、ガスを整備しているのが特徴。1Fは77.94㎡と広々しており、自然光があたり、LDKと風呂回りをイメージした生活シーン全般が撮影できる。室内は余計な仕切りがないワンルーム構造になっているため、撮影するのに適しており、例えばキッチンの後ろ側から撮影するのも障害がない。また、コンクリート敷の広い庭スペースを備えているので、ウッドデッキを敷き詰めてガーデンパーティやグランピングの風景を撮影することも、犬の水遊びシーンなどを再現することも可能だ。

    A棟には広いガーデンスペース
    A棟には広いガーデンスペース

    B棟は、「ザ・スタジオ」という佇まいで、壁が可動式となっており、背景の壁を自由に組み替え、さまざまな雰囲気に合わせて室内を撮影できる92.74㎡の平屋建ての建物。3棟のなかでもメーンスタジオとして活用を予定している。

    可動式の壁を使い、臨機応変にさまざまなシーンが撮影できるB棟内部
    可動式の壁を使い、臨機応変にさまざまなシーンが撮影できるB棟内部

    最後のC棟はDIY提案を生業とするカインズらしいガレージ風のスタジオ。34.78㎡の広さで、コンクリート張りとなっている。これまでDIYの撮影は、本社屋内のスタジオスペースやレンタルスタジオで行っていたが、大きな音が出せなかったり、大掛かりなDIY作業をすることはできず、制限が大きかった。C棟は防音性が高く、汚れを気にせずに使用できるので、商品撮影だけでなく、How to動画の撮影にも使用できる。

    雑然としたガレージの佇まいのC棟
    雑然としたガレージの佇まいのC棟

    カインズは、現在、デザイン部のもとにプロダクト、グラフィック、パッケージの各デザインに加え、撮影チーム加わり、一貫した体制でカインズの世界観をクリエイティブで表現する体制を整えている。撮影におけるムリ・ムダを解消したことで、より効率的により良いアウトプットの作り込みに集中できるようになる。

    カインズ幹部によると、国内のHC企業やホームファッション企業で、ここまで大掛かりなハウススタジオを完備している企業はないという。

    「くらしにららら」を企業メッセージに、住空間のトータルコーディネイト提案とライフスタイル提案を行うカインズにとって、SPA化をいっそう推進する上で、このハウススタジオは1つの大事な役割を果たしそうだ。

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    記事執筆者

    阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

    マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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