究極のセルフサービス?「セルフレジ率95%」をめざす三洋堂新業態店の狙い

成相裕幸
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セルフレジ導入が進む背景に書店経営のひっ迫した実情

スマ本屋神宮前駅店は3台のセルフレジを導入
スマ本屋神宮前駅店は3台のセルフレジを導入

書店業界をみると、セルフレジ導入は書店チェーンでは近年珍しいことではなくなってきている。三洋堂のほか、蔦屋書店を展開する新潟地盤のトップカルチャー、紀伊國屋書店、丸善ジュンク堂書店、三省堂書店といった老舗も導入を進めている。そのなかでも三洋堂は複合商材としてCD、DVDを取り扱っていたことでレンタル貸出対応のセルフ専用機を導入としてきた。

ただ、他チェーンは有人レジとセルフレジの併用が基本で、セルフレジをメインに切り替えるのは同店が初めてといっていい。その背景にあるのは出版物販売の粗利益だけでは、書店経営がかなり厳しくなっていることにある。さらに一般的に個々の書店の差別化は、取扱商品の多寡と陳列方法に大きくかかっている。他業界のように小売店とメーカーが共同して企画制作・販売するPB商品はほぼない。ゆえに回転が早い売れ筋コミックなどをできるだけ確保し薄利多売をする一方、販売経費を少しでも抑えるための省力化としてセルフレジ導入が急がれている。

三洋堂ホールディングスの経営状況をみると、2021年3月期は巣ごもり特需や大ヒットコミック「鬼滅の刃」「呪術廻戦」などで売上が急伸したことで、売上高営業利益率は3.04%だったが、過去2期をみると19年2月期は0.15%、20年3月期は0.75%と低水準。直近22年3月期第1四半期は、特需剥落のため-0.85%まで落ち込んでいる。

同社は粗利の低い書籍、雑誌のほかに、粗利率の高い文具雑貨やテレビゲーム、古本などの商材、さらに複合サービスとしてフィットネス事業など幅広く扱ってはいるものの、営業利益をあげるのには相当に苦労している。

そのような状況下で、店舗オペレーションにかかる労力を減らし、空いた時間でより来店者増のための売場づくりにかける時間を創出することが狙いにある。國光優店長は「少ない労力で利益がだせるかも実験」と話す。

 

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