中食市場は19.8%増加
最も伸びたのは20 代男性
ホットペッパーグルメ外食総研では、毎月、首都圏・東海圏・関西圏の約1万人を対象に、夕方以降の外食・中食の実施状況についての調査を行っている。今回はこのほど発表した、2020年度(20年4月~21年3月)の中食市場の概況について紹介する。
20年度は新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大の影響により、外食市場規模は3圏域合計で2兆1630億円(対前年度比44.8%減)と大きく減退した。その一方、図表1からわかるように中食市場は急拡大した年度となった。3圏域合計の中食市場規模は1兆4715億円と推計され、前年度と比較して19.8%の伸長。これは前年度の伸び率(0.8%増)を著しく上回るものである。
中食の市場規模を構成する要素は、「回数」×「単価」である。20年度の中食市場では、延べ回数が推計17億2546万回で同11.9%増、単価が平均853円で同7.1%増であった。回数の増加率が外食回数の減少率(同40.9%減)と比べて少ないことから、コロナ禍で内食(自炊)も増えていると想定される。ちなみに延べ回数は、さらに「1カ月当たりの実施率」と「実施者の平均頻度」に分解される。20年度の実施率は69.3%、実施頻度は5.09回/月となっている。
性年代別では、もともと国内における人口構成比が高いこともあって、最も中食の購入シェアが高いのは40代男性だった。回数ベースでは13.9%、単価を掛け合わせた市場規模シェアは13.7%となっている。
伸び率については、最も高かったのは、回数ベースでは20代男性(同21.7%増)で、逆に最も低かったのは60代女性(同5.8%増)。市場規模ベースでも、最も高かったのは20代男性(同28.1%増)で、最も低かったのが60代女性(同10.5%増)であった。
コロナ禍で外食を控えなければならない環境 だったことで、男性は中食に、女性は自炊に向かったという流れもあったのか、全体的に男性で中食利用の伸びが目立ち、女性は男性ほどには伸びなかった。
「スーパーで購入」も回復傾向
購入が増加・減少している品目は・・・
21年4月には中食の購入チャネルについての追加調査も実施した(図2)。結果は、1位「スーパーマーケット」(月間利用率59.9%)、2位「外食店のテイクアウト」(同33.2%)、3位「コンビニエンスストア」(同24.6%)、4位「持ち帰り専門店」(同18.0%)、5位「百貨店(デパ地下など)」(同15.4%)となっている。
1位の「スーパーマーケット」は、コロナ禍で内食が進んだことなどにより、20年度は対前年度比5.9%減と減少したが、今回の21年度は同1.6ポイント(pt)増と回復傾向にある。
「外食店のテイクアウト」は20年度と比べると減少したものの、19年度比では高止まりしている。「百貨店(デパ地下など)」は、前年度は1回目の緊急事態宣言に伴い多くの店が休業していたこともあり、21年度は伸長している。
購入チャネルの上位には入らなかったが、飲食スペースを持たない宅配専門店(月間利用率9.1%)も20年度比6.2%増と数値を伸ばしており、とくに20代女性で利用率が伸びている。
では、どのような中食が購入されているのか。具体的な品目を見ていくと、1位が「総菜・おかず・揚げ物類」(月間購入率51.0%)、2位が「弁当」(同40.5%)、3位が「寿司・和食」(同40.4%)、4位が「パン・サンドイッチ・ハンバーガー、おにぎり類」(同26.0%)、5位が「ピザ、パスタ」(同18.8%)となっている。
前年度と比べて「総菜・おかず・揚げ物類」の購入率が微増(前年度購入率58.3%)し、「ピザ、パスタ」(同22.8%)は購入率が下がった。「ピザ、パスタ」はとくに30代と50代の女性で購入率が下がっており、30代女性では「総菜・おかず・揚げ物類」の購入率が上がっている。
なお、中食の購入理由を聞くと、1位が「簡単に済ませたい」(59.4%)、2位が「料理するのが面倒なときがある」(41.7%)、3位が「料理をする時間がない」(28.7%)と上位の選択肢には大きな変化はなかった。
ただし「料理をする時間がない」については、19年度は35.0%だったのが、コロナ禍で最初の緊急事態宣言が出た20年度には23.0%と大きく減少し、21年度には28.7%まで回復した。
長引くコロナ禍で、リモートワークも定着しつつあり、コロナ以前と比較して人々が自宅で過ごす時間は圧倒的に増えているはずだ。そうしたなか「料理をする時間がない」という回答割合が高まり、引き続き料理の時短ニーズが存在することは興味深い点と言える。
【調査概要】
インターネット調査、調査期間:2020年4月~2021年3月(毎月)、
有効回答数:毎月約1万人(首都圏、関西圏、東海圏の合計)。
平成30年人口推計に基づいて性別・年代・地域の250区分でウェイトバックを実施)
注)
【基準人口について】
・2020年度:H30人口推計(ただし、前年度の基準人口にH29人口推計→H30人口推計の減少率をあてて計算)
・2019年度:H29人口推計(ただし、前年度の基準人口にH28人口推計→H29人口推計の減少率をあてて計算)
・2018年度:H28人口推計(ただし、前年度の基準人口にH27国勢調査→H28人口推計の減少率をあてて計算)
・2017年度:H27国勢調査(ただし、前年度の基準人口にH26人口推計→H27国勢調査の減少率をあてて計算)
・2016年度:H26人口推計(ただし、前年度の基準人口にH25人口推計→H26人口推計の減少率をあてて計算)
・2015年度:H25人口推計(ただし、前年度の基準人口にH24人口推計→H25人口推計の減少率をあてて計算)
・2014年度:H24人口推計(ただし、前年度の基準人口に県×性年代別のH22国勢調査→H24人口推計の減少率をあてて計算)
・2013年度:H22国勢調査に基づく、各圏域に含まれる市区町村の対象年代の人口
・2020年度の基準人口の前年度比 3圏域計:-0.8% 、首都圏:-0.5%、関西圏:-1.4%、東海圏:-1.0%
【執筆者】
稲垣昌宏(リクルート『ホットペッパーグルメ外食総研』上席研究員)
エイビーロード編集長、AB-ROAD.net編集長、エイビーロード・リサーチ・センター・センター長などを歴任し、2013年ホットペッパーグルメリサーチセンター・センター長に就任。市場調査などをベースに消費者動向から外食市場の動向を分析・予測する一方、観光に関する調査・研究、地域振興機関である「じゃらんリサーチセンター」研究員も兼務し、「食」と「観光」をテーマに各種委員会活動や地方創生に関わる活動も行っている。肉より魚を好む、自称「魚食系男子」