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めざすは「子供用品の総合ECモール」!石井稔晃社長が語るナルミヤ・インターナショナルの成長戦略!

コロナ禍で、子供服業界も厳しい逆風にさらされている。メーンチャネルである百貨店が長期休業を余儀なくされるなど、営業機会が大きく損なわれたからだ。そんな中、子供服専門店大手のナルミヤ・インターナショナル(東京都/石井稔晃CEO)は、百貨店・ショッピングセンター(SC)・ECとバランスの取れた複合チャネル戦略が奏功、注目されている。堅調なSC、伸び盛りのECに支えられ、20212月期も黒字を確保した。同社の石井稔晃社長は、引き続きECを強化し、自社サイトを子供服だけでなく、「子供用品のポータルサイトに成長させる」と意気込む。

未開拓だったSCチャネルに活路を見出す

イオンモール白山店

―コロナ禍で、子供服専門店は、大手でも多くが苦戦を強いられています。そうした中、ナルミヤ・インターナショナルは2021年2月期決算で、減収減益ながら営業利益、経常利益、当期純利益とも黒字を確保しました。その要因は何でしょうか。

石井 百貨店・SCECという、バランスの取れた複合チャネル・マルチブランド戦略が、奏功したからでしょうね。前期(212月期)の販路別の売上構成比では、百貨店が約21%、SCが約37%、ECが約29%となっています。意外かもしれませんが、子供服業界では、複合チャネルを展開している専門店はないんです。

 ちなみに、当社は、自社オリジナルブランドがほとんどを占め、ライセンスブランド(アナスイ、ケイト・スペード、ポール・スミス・エックスガールなど)の売上構成比は、約6%にすぎません。

―なぜ、複合チャネルが有利だったんでしょうか。

石井 リスクが分散できたからです。例えば、ミキハウスさんやファミリアさんは、高品質・高価格帯路線なので、百貨店チャネルがメーンです。ところが、コロナ禍で百貨店は長らく休業を余儀なくされたため、凄まじい逆風を受けてしまった。百貨店に依存する子供服専門店は販売機会を失い、業績が大幅に落ち込んでしまったわけです。それに対して当社は、百貨店チャネルへの依存度が低下していたので、それほどダメージを受けませんでした。一方で、コロナ禍でもSCチャネルは影響が少なく、ECはむしろ追い風になりました。

―ナルミヤ・インターナショナルももともとは百貨店チャネルに強かったと思いますが、チャネルの複合化に踏み切った理由は何でしょうか。

石井 私が経営再建のため2010年に当社に入ってから、チャネルを複合化したのです。当時は百貨店チャネルが弱体化してしまい、当社も最盛期に350億円規模だった売上高が、150億円規模まで縮小してしまったんですね。百貨店チャネルだけに依存していては、先がないと判断しました。

 そこでまず、新しい販路としてSCに注目しました。前職のアパレル会社ポイント(現・アダストリア)では、SCチャネルの開拓に取り組んでいたので、その経験も生かせると考えたんです。

日常生活でも使えるオシャレな子供服

小物も充実しているSC向けブランド「プティマイン」

―とはいえ、ナルミヤにとっては、SCは未開の地だったわけですよね。どのようにチャネルを開拓していったのですか。

石井 「プティマイン」といった、SC向けの新しいブランドを立ち上げました。価格は、百貨店向けブランドの3分の14分の1に設定しました。日本製が中心の百貨店向けブランドと違って、SC向けブランドは一部を除いて中国製ですが、品質が向上しているので、コストパフォーマンスはいいと考えています。

 生産サイクルも大幅に変えました。百貨店向けは、半期ごとの展示会での受注がメーンですが、SC向けはトレンドに対応し、シーズンの3060日前でも受注できる短サイクル生産体制にしました。「期中対応」に近いですね。

―子供服でも既存のSC向けブランドはありますが、どのように差別化を図ったのでしょうか。

石井 百貨店向けブランドで培った、当社のノウハウを生かしました。当社のオリジナルブランドは、デザイン性に優れていると自負しています。既存のSC向けブランドに比べて、「上品で大人っぽい」「かわいい」と、お客さまからも好評です。一方で、百貨店向けブランドは、基本的に「ハレの日・お出かけ用」ですが、当社のSC向けブランドは、「日常生活でも使えるオシャレな子供服」として新たなニーズを掘り起こし、後発ながら、ほかのブランドにはないポジションを確立できたと考えています。

―それが、SCチャネルの急拡大にもつながったわけですね。

石井 そのように考えています。ただし、競合するSC向けブランドも、デザイン性を追求するなど、今や当社も追われる立場になってきました。当社には、社内の女性デザイナーもいますし、全国には会員のお客さまも大勢いらっしゃいます。そうした人的リソースを活用して情報を集約し、今の“若いママ”のニーズにフィットした商品開発・提案力に、磨きをかけていきたいですね。

子供用品がワンストップ・ショッピングできる

―さらに2008年には、ECチャネルにも進出しました。

石井 子供服のECチャネルも成長することはわかっていましたからね。手を打っておくべきだと考えたんです。ECは現在、ZOZOTOWNや楽天などのECモールと、自社サイトの売上がほぼ拮抗していますが、今後は自社サイトに力を入れたいですね。

 自社サイトでは、自社の約24ブランドを取り扱っているのですが、実は、百貨店向けブランドも、SC向けブランドも同じサイトで買えるようにしています。なぜかと言うと、同じお客さまが、百貨店向けブランドも、SC向けブランドも両方お買い上げになるからです。つまり、お客さまは子供服も、お出かけ用やギフト用なら百貨店向けブランド、自宅用ならSC向けブランドといった具合に、使い分けているわけです。

―同じサイトで、さまざまな子供服がワンストップ・ショッピングできたほうが、便利だというわけですね。

石井 そのとおりです。ただし、それだけではありません。子供服をワンストップ・ショッピングできるようにするなら、いっそのこと、自社ブランドに限らず、競合する他社ブランドも販売しようと考えています。ブランドショップではなく、セレクトショップに脱皮したいわけです。そのほうが、お客さまにとってより便利になるわけですから。言わば「子供用品の総合ECモール」を目指しています。

―それは興味深いですね。そうなると、ECでは、もはや既存のカテゴリーの枠を越えてしまいますね。

石井 おっしゃるとおりです。さらに、子供服だけでなく、子ども関連のアイテムを一堂に集め、ポータルサイト化したほうがいいと考えています。アパレルのほか、ベビーカーやおもちゃ、離乳食といったさまざまな商品構成にしたい。子ども関連のアイテムなら、衣食住何でも手に入る、子供用品の百貨店的なECサイトに育成したいですね。

石井稔晃社長