追悼 布施孝之キリンビール社長(1)
戦略は絞ることが大事
予感は的中した。
告知だけの営業活動は、4月上旬から成果が見え始めた。
若手のやる気に触発されたのか、斜に構えて「お手並み拝見」を決め込んでいたオールド社員たちが一転、動き始めたことも大きかった。
「一番絞り」はもちろん、飲食店からはワインや焼酎、ウイスキーのオーダーが続々と入った。一石二鳥ならぬ、三鳥にも四鳥にもなった。
布施さんは、この一件から、「戦略は絞ることが大事」と確信するようになった。逆に言えば、捨て去る勇気が必要ということ。「表に出るものはシンプルに、裏のロジックは緻密にすることの重要性を学んだ」という。
定年間際の社員に「まさかこの年齢になってこんなに素晴らしい仕事ができるとは夢にも思わなかった。これで定年後の残りの人生も誇りをもって生きることができる」と言われた時には、感激するだけじゃなく、マネジメントの重要性とやり甲斐を心底感じた。(続く)
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