ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営29 コロナが促した販売形態の変化とは

西山貴仁(株式会社SC&パートナーズ 代表取締役)
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販売形態の変化

 ここまで商業集積の形態を解説したが、実は同様に販売形態も変化している。この動きがリテールには大きく影響を及ぼすため、冒頭で指摘した「変化に立ちはだかる人」「変化を受け入れない人」が進化を止めることも多い。

 ストア・リテールは当初「対面販売」だった。呉服屋は反物を挟んで商談と採寸がなされる。貴金属も同様に高額なものは対面で説明を聞き購買を判断する。今でもデパートの貴金属売場や宝飾品売場やメガネ売場は対面販売である。

 その後、定価販売が広まり「つるし」と言われる既製服が登場する。ここでは対面販売である必要はなく顧客は既製の商品を自由に手に取り、価格を見て購買を判断する。店舗スタッフの機能が、機能性やコーディネイトや在庫の説明などに限定される。背広(スーツでなくあえて背広)も採寸し生地から仕立てていたものが今は身長ごとに並べられた製品を選ぶ。それまで特殊な検眼技術が必要と思われたメガネは実はそれほど特殊で無いことが分かり、今ではZoffJINSのように什器に並べられたものから顧客は選ぶ。対面だったものが側面販売に変わったのだ。

 そして側面販売は、さらに「セルフ販売」へと進化する。対面販売の八百屋や魚屋がスーパーマーケットでは自分で商品をカゴに入れレジに運び自分で袋に詰める。今ではUNIQLOにように洋服でさえカゴに商品を入れてレジへ行きキャッシュレスで決済するセルフ販売へと変わった。

 このように販売方法は「対面販売→側面販売→セルフ販売」へ進化し、顧客に利便性と定価による安心感を作ったのである。

コロナ禍が加速させた販売形態の変化

図表2 販売形態は効率化の歴史
図表2 販売形態は効率化の歴史

 では、この最終形「セルフ販売」の次は何か。それがコロナ禍で伸びた「ネット販売」、いわゆるECである。

 対面でも側面でもセルフでも無い、クリックという行動で購買と決済が完結するのだ。どう考えても便利だと思うが、リアルな店舗(販売形態)に慣れ親しんだ事業者はなかなかこの変化を受け入れようとせず、「リアルが大切」と言う。

 確かにリアルの価値はある。これは間違い無いし否定もしない。でも、歴史はそうでは無い。リテールは、効率化と顧客への利便性で成長してきたビジネスである。

 もちろん、側面販売が登場したから対面販売は無くなることは無いし、セルフ販売が登場したからと言って側面販売は無くなることは無い。しかし、減少することはあっても増加することもない。ということは、ネット販売の増加は他の販売方法から徐々に移行することは間違いない。前回も店内から行うライブコマースが奏功する時代だと解説した。

 ポストコロナ、販売方法の進化はますます進む。旧来にこだわることなく、次の策を考えることが今は大切ではないだろうか。

西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。201511月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒

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