ヤオコーを超える顧客支持率?コロナ禍まとめ買い時代に客数を伸ばす、「ベルク」強さの正体!

大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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「低価格」を実現する強固なビジネスモデル

 なぜ、ベルクは今、消費者に支持されるのか。本特集ではそのベルクの強さの秘密を明らかにするべく、専門家や業界関係者の協力を得てさまざまな面から調査・分析を行った。

 その結果のなかでも、とくに注目したいのが、前出のレシート調査で「ベルクをメーンのSMとして利用する理由」として消費者からあがった「安さ」と「ポイントやお得なサービス」という2つの要素である。まず「安さ」については、節約志向に対応するべく1円単位で熾烈な価格競争を戦っているのはその他SM企業も同様だ。そうしたなかベルクは、低価格を実現するための強固な仕組みを有している点に強さがある。

 ベルクは経営方針に「生産性を追求したチェーンストア経営」を掲げ、生産性を高めるべくチェーンストア経営の大原則である「標準化」に徹底的に取り組んできた。

 具体的には、本社主導による店舗運営、自社による物流センター・配送体制の構築、平均売場面積約600坪で、レイアウトから品揃え、売場づくり、設備・什器・備品まで統一化された店づくり、LSP(レイバー・スケジューリング・プログラム)の導入によるムダ・ムリ・ムラの削減など、その取り組みは本部から店舗、物流網まで全社にわたり、ベルクのビジネスモデルそのものになっている。これにより、ベルクの従業員1人当たり売上高は年間3614万円(21年2月期)と、同業他社より約1.4倍も高い生産性を実現。こうした販売生産性の高さが、高収益とさらなる低価格を実現可能にしており、この仕組みが低価格競争において優位性を発揮しているのだ。

 ここでベルクが支持される理由として述べておきたいのが、高い生産性と同時に、顧客に「ふだん使いのSM」としての利便性の提供をめざしている点である。

 ベルクの経営理念は「Better Life with Community(地域社会の人々により充実した生活を)」で、これは現在の企業名ベルク(Belc)の由来にもなっている。本特集で行った店舗調査では、明るく清潔感のある店内、買い回りしやすい売場配置、ふだんの食卓に即した品揃え、広い駐車場など、ベルクが地域の日常において便利で快適な店づくりを1店1店で実践している姿が浮き彫りになった。これらの要素はコロナ禍で消費者がSMに求めた安全・安心、ショートタイムショッピングのニーズに合致しているものである。

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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