三菱商事ファッションの無在庫アパレル「THE ME」デジタル活用が可能にする短納期ビジネスモデルとは?

2021/08/31 05:55
両角晴香
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世界中で環境問題への関心が高まる中、大量生産と在庫セールに頼る従来のアパレル業界のビジネスモデルが転換期を迎えている。三菱商事ファッション(東京都/村田 茂CEO)は20207月、在庫を持たない完全受注型アパレルブランド「THE ME(ザ・ミ―)」のリアル店舗を東京・神宮前にオープンした。同社が手がける初の小売事業だ。「量産を前提とした作り方をせず、一人ひとりに合わせる」をブランドコンセプトに、アパレル業界に新風を吹き込む。

最大90分、個室でマンツーマン接客

接客ルーム
THE ME直営店の接客ルーム

 三菱商事ファッションは、OEM(委託者のブランドで製品を生産すること)・ODM(同製品をデザインから製造まですること)の商社として、アパレル業界が抱える過剰生産・過剰在庫の課題を目の当たりにしてきた。同社デジタル事業推進本部新規事業部 セールスマネジメントチームの杉村穣氏は、「THE MEを通してサステナブルを啓蒙するだけでなく、プレイヤーとしてこの課題と向き合い、アパレル業界に新たな動きをもたらしたい」と事業立ち上げの思いを語る。

 THE ME 最大の特徴は、お直し以上、オーダーメイド未満の「チューニング(サイズ・シルエット補正)」。自分の体型や好みにあった服を、一着から作ることができる。

 まずお客は、THE MEの公式ホームページから事前予約をして店を訪れる(予約なしでも来店は可能)。最大90分のマンツーマン接客を行うのは「ナビゲーター」と呼ばれる専門スタッフだ。

 店には、メンズとウイメンズそれぞれ約80品番のサンプルが並び、ナビゲーターが客の好みをヒアリングしながら、コーディネイトを考えていく。次に3Dボディースキャナーで首まわり、胸まわり、ウエスト、ヒップなどを採寸する。その後サンプルを試着してもらい、細かいチューニングを行う。これらはすべて個室で行われるため、客は周囲を気にせず自分だけの洋服作りを楽しむことができる。

 商品はビジネスシーンを想定した「オンの服」が中心だ。汎用性の高いベーシックなデザインが揃い、セットアップ約5万円〜、ワンピース約2万円〜、カットソー約9千円〜といった価格帯で提供される。この販売価格にはチューニング料も含まれているため、客は追加料金を気にせずにサイズ調整をしたり、自分好みの服を追求できる。

 商品を買う・買わないの判断を、その場でしなくていいのも特徴の一つ。前提として、店にはレジがない。「衝動買いをしてタンスの肥やしにならないよう、本当に欲しい商品をオンライン決済していただく流れをとっています」(同)。こうしたスタンスは、同社と消費者双方がSDGsの目標である「つくる責任・つかう責任」を考えるきっかけになると杉村氏は見ている。なお、来店客のうち約7割が購入に至っている。

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