切り返す株価
ドラッグストアを展開するコスモス薬品(福岡県/横山英昭社長)の株価が切り返しています。本稿執筆時点である2021年7月30日の終値は、直近3ヶ月間に+18%上昇しました。
上昇の直接のきっかけは7月12日に発表された2021年5月期の決算です。発表直前の株価はおよそ16000円前後でしたが、発表後株価は上昇を続け、7月30日には18590円で取引を終えています。なお同社は同日、創業者で代表取締役会長である宇野正晃氏が8月24日の株主総会をもって代表権を返上して取締役会長に就任、横山英昭社長1人が代表権を持つことを発表しています。
ちなみに過去3ヶ月の主要小売企業の株価で最大の下落率だったのはファーストリテイリングです。コロナ禍のステイホームを追い風に小売業界においても株式市場においてもプレゼンスを高めた昨年の株高の反動が出たと言えるでしょう。
こう考えると、入れ替わって上昇しているコスモス薬品株は、アフターコロナに相応しいエクイティストーリーを示唆しているのかもしれません。気になるところですので、もう少し見ておきましょう。
好業績だった2021年5月期決算
株価は決算を好感したのではないかと述べましたので、数字を確認しておきます。
2021年5月期は売上高が対前期比+6%増収の7264億円、経常利益は同+13%増益の358億円でした。売上高経常利益率は4.9%になり規模で同水準といえるウエルシアホールディングスやツルハホールディングスに遜色ないレベルです。さらに、自己資本当期純利益率(ROE)は17%でウエルシアホールディングスをしのぎ、ドラッグストア業界の中で最高レベルにあります。
さらに、2022年5月期の会社計画については、売上高7500億円、経常利益359億円、当期純利益250億円と開示されています。収益認識に関する会計基準の適用をするため、対前期比増減率は示されていませんが、概ね順当な計画に思われます。
しかし、
出店再強化、調剤併設型ドラッグストアの関東圏での展開
報道によれば、
残念ながらコスモス薬品は必要以上の情報開示には消極的で、この場で語ることが難しい点が多いのですが、筆者の記憶をたどる限り、同社は調剤については前のめりではなく、機が熟すのを待つスタンスだったと思います。一方、同社の店舗案内を検索すると既に相応数の調剤併設店舗を運営しているようにも思います。したがって、現在同社がどの程度調剤事業を展開するための事業基盤を構築できているのか計りかねます。
しかし、筆者は今回の報道をポジティブに評価したいと思います。
現金創出力の底上げが進む
さて、アナリスト的視点で先ほどの決算を眺めた時、同社の現金総出力が着実に高まっている印象を受けました。これが今回の決算の大切なポイントだと思います。
現金創出力を見る指標の一つは売上高経常利益率だと思います。
株価が最高値を超える日
さてコスモス薬品の株価の最高値は2020年7月の20100円です。現在から僅かに+8%高い水準です。
最高値を着実に更新するためには、出店の再加速によってドミナントエリアの拡大と新エリアへの足掛かりをしっかり構築することは言うまでもありませんし、資金的にも問題がないことも既に指摘しました。
しかし内部成長だけではもったいない。同社は手元現金が有利子負債を上回り、負債調達力も潤沢です。
ニトリホールディングスが島忠を買収し隣接する事業領域に切り込んでいったように、コスモス薬品がM&A(合併・買収)を通じて調剤薬局業界の集約や同業界のIT化の流れを加速させるのではないか。株価最高値を前に、そのような可能性に思いを巡らさざるを得ません。