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佐藤勝人の「本当に強い店」づくり#3 4パターンのチラシを使い分け集客し、囲い込む方法とは

本当に強い店づくり

消費環境が大きく変化しているこの時代、生き残りをかけた店づくりの方針として、さかんに「強い店」というキーワードが繰り返されています。「強い店」とは何か、どう作るべきかをわかりやすく指南する連載「佐藤勝人の『本当に強い店』づくり」。第3回は、ポスティングチラシや手配りチラシなど、新聞折込以外のチラシをどう活用するべきかについて迫ります。

チラシには4パターンある

 前回は、折込チラシをうまく活用する方法についてお伝えしました。しかし、チラシにはまだまだ他の活用方法があります。販促そのものがデジタルに移行しつつある世の中ですが、チラシ特有の「もらったら手元に形として残り、見返すことができる」という特性は無視できないものです。アプリをダウンロードしてまでお得情報を見るのは面倒くさくても、チラシは渡されれば嫌でも情報が目に入ってきます。この手軽さこそが、チラシ最大の武器でもあるわけです。

 今回は、大きく分けて4パターンあるチラシについて、前回お話しした折込チラシを除いた3つについてお伝えします。

ポスティングチラシを活用するコツ

Person’s hand pulling a pile of junk mail out of a community mailbox

 まずはポスティングチラシについてお話ししましょう。ポスティングの良いところは、配る対象を意図的に選べることです。一軒家が多い地域なのか、マンションなのか、昔ながらの住宅街なのか、新興住宅街なのか…それぞれの地域特性によって、住んでいる人の年代や属性はある程度決まってきます。どういう層に情報を届けたいのか、商品を知ってもらいたいのかによって、配る対象を変えられるのです。

 実際に私が経験した例があります。地方の開業から築35年の老朽化が目立つ食品スーパーで集客は折込チラシ一辺倒、客層の高齢化が深刻になっていた店がありました。昔ながらのお客は通ってくれるのですが、周辺の新興住宅街に新しく住み始めたような人々には見向きもされないわけです。経営者は、その原因を「店や売場が古臭いからだ」「商品がよくないからだ」と考えていましたが、この認識が間違っていたことをポスティングチラシが証明しました。

 ポスティングを地道に続けたところ、それまで毎年10%ずつ減る一方だった客数が、なんと20%も伸びたのです。もちろん、改装や商品のリニューアルは一切していません。店には、それまでは見たこともなかったベビーカーを押した若いお客の姿が見られるようになりました。つまり、この店の商品情報が届いていなかったのです。「ここにこういう商品がある」という情報をポスティングチラシで発信したことで、新規のお客が増えた、というわけです。

試してもらいたい自社でのポスティング

 ただし、ポスティングには地道な努力が必要です。商品の属性にもよりますが100枚配って20%つまり20人が見てくれて、10%つまり10人が欲しいと思ってくれて、1%つまり1人がすぐ来店する、というように考え、効果を検証しながら配布エリアを変えて継続することが大切です。前述の店の場合には、そもそも昔からのお客がずっと通ってきてくれているということは、商品そのものは良いものだったわけです。ポスティングでそれまで接点のなかった層に対して来店のきっかけを作り、「こんな商品を売っていたのか」「外見は古いけど、売っている商品はいい」と感じてもらえればそれで“勝ち”なのです。

 もう一つ、可能なら試してもらいたいことがあります。それは、ポスティングを外部に委託するのではなく、店舗のスタッフで行うということです。店舗で働くスタッフが、全員その地域の人間だとは限りません。商圏を実際に周り、自分の店を取り巻く環境がどのようなものなのかを知ることはとても大切です。実際にスタッフがポスティングをしていると、常連客から声をかけられることがよくあります。こうしたコミュニケーションが生まれることも、地域に根ざした店づくりには重要なことです。

ターゲットを狙い撃つ手配りチラシ

 さて、次は手配りチラシです。手配りチラシのコツは、「その人にとってお得になる情報をきちんと載せる」ことです。手配りチラシは、いわば強制的に送りつける折込チラシやポスティングと違い、まず受け取ってもらえるかどうか、というハードルがあります。多くの人が身に覚えのあることと思いますが、道端でチラシを差し出されたとき、チラッと見て「自分には関係ないものだな」と思うと、そのまま受け取らずに避けて通るかゴミ箱に直行でしょう。

 手配りチラシを効果的なものにするためには、ターゲットの年齢や性別に合わせ、キャッチコピーなどを変えたいくつかのパターンを用意しておくと良いでしょう。チラッと見て、「これは自分に向けたものだ!」と思わせるのです。キャッチコピーのセンスが最も問われるチラシとも言えます。そこまでして手配りチラシが必要か?と思われる方もいるかもしれませんが、手配りチラシには、より効率よくターゲット層を狙い撃ちする力があります。たとえば、スーパーのチラシを配りたいのであれば、お迎えの主婦層をねらい幼稚園や保育園の周りで配布すれば効率は抜群です。

 最後は店頭チラシです。このチラシの目的は、訪れたお客に「もう一品」を買わせることです。今日の目玉商品などをわかりやすく掲載したチラシで、「今買ってもらう」「ついでに買ってもらう」ことで客単価を伸ばすのです。

LINEなどへの誘導もチラシを活用

 このように、チラシの目的はそれぞれ異なります。すでに決まった層に情報を届ける折込チラシ、地域からターゲット層を定めて配布するポスティングチラシ、より効率的にターゲットを狙い撃つ手配りチラシ、客単価を引き上げる店頭チラシ、と、それぞれを目的に応じて使い分けることが大切です。

 もう一つ、チラシを利用して今のうちに行っておくべきことを最後にお伝えしましょう。それは、LINEなどへの登録を促すことです。主に食品小売は、コロナ特需を経て徐々に需要がひと段落しつつあるのが現状です。コロナの恩恵が完全に無くなった時、残されるのは熾烈な競合環境と価格競争です。それまでに食品小売各社がやっておくべきことは、LINEなどへの顧客の囲い込みです。

 チラシにはQRコードを簡単に載せることができます。LINEなどへ移行させるのに、これほど有効なツールを活用しない手はありません。ぜひ、今のうちに取り組んで欲しいものです。

 次回は、SNSやメーリングリストを用いたデジタル販促のコツについてお伝えします。