少子化でも成長の余地はある!西松屋チェーン大村禎史社長インタビュー

聞き手=下田健司 構成=森本守人(サテライトスコープ)
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──国内でどのくらいまで店舗網を広げられそうですか。

大村 日本の人口は1億3000万人弱です。従来、当社が設定していた1店当たりの商圏人口10万人を前提にすると、1300店ほどは出せるのではないかと考えています。ただ近年は沖縄県の宮古島、石垣島など、商圏人口が5万人のエリアにも進出しています。物流をさらに効率化すれば、最大で1500店前後までは増やせるのではないでしょうか。

 また地域によっては、それほど出店できていないところもあります。たとえば関東は分厚いマーケットが広がっていますが、約700万人の人口を抱える埼玉県には、まだ51店舗(17年12月1日現在)しか出していません。人口が多い地域は競争も激しいのですが、出店余地はまだまだあると考えています。

──標準とするフォーマットはどのようなものですか。

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売り場面積200坪タイプの店舗が全体の6~7割を占める。今後は競争力の面から300坪タイプを標準フォーマットにする方針だ

大村 現在、売場面積200坪タイプの店が全体の6~7割を占めています。店舗運営面からすれば、200坪が最も効率がいいのですが、競争力の点からこれからは300坪タイプを標準フォーマットにする方針です。

 出店形態はフリースタンディングではなく、CSC(コミュニティ型ショッピングセンター)、NSC(近隣型ショッピングセンター)などへの出店を主眼に置いています。また近年、増加傾向にある居抜き出店も選択肢の1つです。

──店舗規模が大きくなると、売場も変化しますか。

かさ
売場面積の拡大に伴い、衣料品のほか傘や靴など関連用品の品揃えも充実させる

大村 従来、当社で品揃えしてきたのは、おもに小学校に入学するぐらいまでの子供向けの商品でしたが、大型化することでさらに上の年齢層にも対象を広げます。また衣料品だけでなく、靴をはじめとする関連用品も扱うことによって品揃えを拡充します。PB比率も高め、売場を大きく変えていこうと考えています。

ネット通販を強化、専用センターも整備

──国内で1500店舗まで出店可能とのことでしたが、そのあとはどのような成長戦略を描いていますか。

レジ
人材確保難を受け、店舗作業の省力化にも取り組んでいる。最近では、自動釣銭機タイプのレジを導入している

大村 ネット通販に力を入れます。楽天をはじめとするネット通販サイトに出店しており、ネット通販の年商は35億円ほどです。事業拡大を視野に、茨城県守谷市にあるネット通販専用物流センターの整備をすでに終え、専用センターから配送する体制へ移行済みです。そう遠くないうちに、自社サイトも開設する予定です。

 当社は全国で店舗を展開していますが、東京23区内は家賃が高く、決して店舗が多いとは言えません。その点、ネット通販であればそうしたエリアにも当社の商品を提供できます。

──ネット通販の競争は激化しています。自社のサイトを選んでもらうための戦略はありますか。

大村 やはりPBの品揃えです。NB(ナショナルブランド)の紙おむつや粉ミルクといったコモディティは、どこで買っても同じ商品ですし、結局は安い価格で販売するサイトが支持されます。しかし低価格で品質のよいオリジナル商品を充実させることができれば、他社にない武器になります。

 当社のPBは、開発段階から数量管理を徹底しており、アイテムごとに何がどれだけ売れるのかといったことも詳細に予測しています。そのためネット通販においても、需要に応じて、柔軟に追加生産ができるのも強みです。

──海外進出は考えていますか。

大村さん
西松屋チェーン 代表取締役社長 大村 禎史

大村 国内で店舗網が行き渡ったあとに検討するつもりです。今のところ具体的な進出先は想定していませんが、日本国内で構築してきたビジネスモデルを持っていくとなれば、ある程度モータリゼーションが進展し、また経済的な発展を続けている国になるでしょう。

 一方、国内では新たな業態、フォーマットの開発に着手したいと考えています。これについては流通先進国である米国を研究し、可能性がありそうなものを日本でもテスト展開しながら、次代のビジネスモデルを探っていきます。

──目標とする経営数値はありますか。

大村 売上高1800億円、経常利益率10%で、5年後をメドに達成したいと考えています。そのためには、現在取り組んでいるPB開発をさらに強化し、国内の店舗でお客さまにとって魅力ある品揃えを追求することが先決だと考えています。

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