アパレルは「丸ごと消滅する」産業か? 世界のDX化に乗り切れないリアルな理由と本質的解決策

河合 拓
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DX ITは単なるコストではなく研究開発投資として認識すること

baona/istock
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西田 先に述べたようにDX、ITをビジネスの中心と認識しているのなら、相応の投資が必要なのは自明です。これからのIT(DXテクノロジー)の役割は、利便性を体現させる情報提供機能、クリエイティブな発想をサポートするUX、到底人間では見つけられない法則性の発見などになっていきます。ただしスイッチをいれれば動くものではなく、試行錯誤でそのHigh hanging fruits(企業変革の上位概念、ヴィジョン、戦略など) を固める覚悟が必要です。

 そういう意味で、DXはベンダーに丸投げでなく、一緒に新しい事業を創ってゆくという研究開発投資という側面で理解すべきなのです。また、その成果は、『いくらコストダウンできたか?』でなく、ビジネスの業績にかかわる計数(客数・客単価の増加、トラフィックの増加、人時や売場生産性の向上など)でも計測が可能です。

 また試行錯誤しながらDXを推進するということは、失敗を許容し失敗から学ぶという運営基盤がベースとなるのですがここがなかなかご理解頂けない。チェンジリーダーはこのことしっかり考えていただきたい。

河合 私は、『お湯を入れれば3分でできあがるカップヌードル』症候群と呼んでいます。なんでも、金で買えると思っている。特に、こうした黎明期の技術はベンダーと企業が一心同体となり、一緒にリスクも許容するような姿勢で取り組むべきですね。コンサルタントを使う理由は、そのリスクがミニマイズ(最小化)されること、そして仮に不測の事態が発生した時、そのダメージを最小化できることだと思います。

 「金を払ったのだから完全なものを納品しろ」と上から目線で言われると、そのプロジェクトが極めて難易度が高い場合、サービスプロバイダー(コンサルタントやパートナー企業)側が『御免被ります』と断ってくる可能性もでてきますね。

西田 はい、自社製品の製造原価のようにそのテクノロジーを調達、運用するためにどの程度の資金が必要かについて技術の希少性、エンジニアの市場価値、カスタマーサクセスの難易度などを踏まえた相場観を持っていなければ成果を出せるパートナーからは見放されていくことになっていきます。結果、いつまでたってもDXは実現しない、結局は他力本願ではいけないということなのです。

 デジタルで実現したい目的に対し予算の金額が桁2つ違うことはざらにあります。買いたたきや値引き要求は、あえていうなら無知、無理解であると考えるサービスプロバイダーもいるでしょう。結果、成果を出す意欲の薄いベンダーが寄ってくるようになり失敗・悪循環に突入してしまいます。

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