宮崎県に本社を構え、事業展開するマルイチ(高木大社長)。商勢圏では人口が減少する一方、業態を超えた競争が激化、経営環境は年々厳しさを増している。それに対し価格で対抗するほか、地道なファンづくりにより成長を続けてきた。しかし遠くない将来、戦いはより熾烈なステージに移行すると見て、次なる一手を計画する。
年々、厳しさ増す競争環境
マルイチは宮崎県北東部に位置する日向市に本社を置く食品スーパー(SM)企業。創業は1951年で、食品の小売を開始したのは60年代からである。オール日本スーパーマーケット協会(大阪府/田尻一会長:以下、AJS)に加盟した84年以降、本格的なSMをめざした店づくりに取り組みながら徐々に店数を増やしてきた。現在、日向市3店、延岡市3店、宮崎市2店の合計8店を展開する。
宮崎県の人口は1996年の117万7000人をピークに年々減少、直近の20年は106万6000人(同県推計)となっている。総人口に占める65歳以上の比率である高齢化率は16年に30%を超え、全国平均より約4ポイント(pt)高い水準で推移。75歳以上の後期高齢化率は県内26市町村すべてで14%を超えている。
今後もこの傾向に歯止めはかからず、さらに加速すると見られる。一方、競争は年々激しさを増している。
商勢圏では同業態のSMに加え、食品の扱いが大きいドラッグストア(DgS)、ディスカウントストア(DS)といった異業態が台頭。なかでも延岡市はコスモス薬品(福岡県/横山英昭社長)が創業した地であり、市内だけで9店舗ある。
本部を置く日向市に目を向けると、直近で大きな動きがあったのはトライアルカンパニー(福岡県/石橋亮太社長)だ。20年6月に日向日知屋店が新規オープンしたほか、同年8月にはJR日向市駅前の日向店もリニューアルオープンしている。
競争の激しい九州エリアの中でも、とくに同社商勢圏では価格訴求型業態の存在感が増している。そうした非常に厳しい環境にありながら、マルイチはこれまで着実に成長を続けてきた。
同社が現在の8店舗体制になったのは宮崎県の地場SM企業から譲受し、本郷店(宮崎市)をオープンした12年10月で、それ以降の出退店はない。その13年5月期の売上高が79億5500万円だったのに対し、直近の21年5月期は137億円(着地見込み)となっているのである。つまり8店だけで57億円増、実に72%超も拡大した計算で、20年5月期まで8年連続の増収も達成している。まさに驚異的ともいえる伸長率だ。
マルイチの高木社長は、その間の取り組みについて次のように説明する。
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