コロナ禍でも増収増益の「モスバーガー」が見据える次なる一手

ダイヤモンド・チェーンストア編集部
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デジマ強化で巣ごもり需要を刺激

 マーケティングではデジタル施策を強化。自社アプリ(約380万ダウンロード)、WEB会員(約420万人)、ツイッター(約108万フォロワー)をうまく連携させ、テレビCMを効果的に投入することなどでキャンペーンや新商品、限定商品の告知を効果的に行い、需要を刺激。飽きさせない工夫で継続的な利用を促した。

 リアル店舗も編成を改善した。増収増益に貢献した郊外店舗では、採算状況等を見極めながら、閉店やリニューアルを実施。収益力の最適化に努めた。

 店舗の多様化にも積極的に取り組んだ。カフェ色の強い「モスバーガー&カフェ」、テイクアウト専門の店舗、小型店など、地域のニーズや顧客の利用動機に合わせ、新たな需要の開拓を模索し、変化への対応力を磨いた。

モスフードサービスの既存店売上高推移
モスフードサービスの既存店売上高推移

 これらの施策の結果、21年3月期は既存店客数が5.3%減となったものの、同客単価は同14.8%増となり、既存店売上高は8.8%増と大幅増収を達成した。

コロナ禍で売上を伸ばした飲食チェーンの共通項は?

 コロナ禍で売上を伸ばした飲食チェーンには共通項がある。危機の一方で降ってわいたニーズの増大を的確な施策で掬い取る抜かりのなさだ。運の要素も否定できないが、その場しのぎでない経営を意識しているかが、大きな差を分けたといえる。

 逆に言えば、本来、数年先を見据えての施策が、図らずも災厄によって前倒しされ、効力を発揮したに過ぎず、いずれやる必要のある取り組みではあった。その意味では、コロナ特需に浮かれている暇はもちろんなく、むしろさらなる一手を模索することが来期以降へ向けての重要課題となる。

 店舗多様化や海外展開の推進はそうした施策の一つといえ、同社はすでにそうした所に目を向けている。

 具体的にはモスブランドを活用したお菓子類の販売や食パン、さらにアパレルにも参入し、ハンバーガーチェーン以外の柱づくりも着々と模索し始めている。

 

コロナが教えてくれた経営の神髄

一寸先は闇。コロナによって、どんなに好調でもあぐらをかけば、不測の事態で一気に転落する――。コロナはそのことをいやというほどリアルに教えてくれた。

同じ飲食業界でもコロナ禍で明暗がクッキリと分かれたが、裏を返せば、今回「暗」に沈んだ業態でも、これをチャンスに新たな切り口で前進を続ければ、一転、「明」の側に転換する可能性は十分あるということだ。

気を緩めることなく策を打ち続ける同社は、2022年3月期の売上高を前期比1.4%増の730億円、営業利益を同19.5%増の17億円、経常利益同26.1%増の18億円と見通している。

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