個店経営のお手本セブン-イレブンのFC方式を逆手にとった出店戦略とは?

島田陽介(島田研究室代表)
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ウォルマートと似て異なるセブン‐イレブンの出店戦略

 個店経営を進めるにあたって、セブン‐イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン‐イレブン)がとった「出店戦略」は2つある。

 1つめは、①まず商勢圏を定め、②店舗より先にその商勢圏のロジスティックス拠点を定め、③次にその商勢圏を隙間なく、④いくつかの商圏にわけて出店し、⑤その商勢圏の競争相手をせん滅する、という方法論である。注目したいのは、この出店戦略は、個店経営とは対照的な経営戦略である「画一売店チェーン」を志向する、米ウォルマート(Walmart)とうり二つであるという点だ。

セブンイレブンのロゴ
写真は、セブンイレブンのロゴ。2017年1月12日に撮影。(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 ウォルマートがこのような出店戦略をとったのは、そうすることでその地域・都市圏を、ウォルマートの品揃えに関しては“せん滅”し、競争相手の存在を許さないという戦略を実行するためであった。事実、ウォルマートは同業のすべてをせん滅した。だが、セブン‐イレブンが同じ出店戦略をとった意図は異なる。理由は2つあった。

 1つは、「個店経営」を実行することである。というのも、この出店戦略においては、個々の商圏に出店した個店は、同企業の他店と商圏を接するため、商圏を拡げることは、他店の商圏を侵すことになる。

 とすれば、個々の店舗は自らの限定商圏で固有、かつ有限の住民・人口を対象にせざるを得ず、「その人口(=コンシューマー)を、いかに多数の客数(=カスタマー)に転換するか」に腐心するしかない。個々の店舗は、物理的に限定された自店の商圏を深く耕す以外、客数・売上高・利益を増やす方法はなく、それこそ「カスタマー」のニーズを探り・創造する「個店経営」の基点になるのである。

 「カスタマー」とは、繰り返し(習慣すなわちカスタムとして)来店する客のことであり、有限なコンシューマーの「人口・人数・世帯数」と異なり、同じ人口・世帯構成メンバーが、さまざまな「カスタマー」になって来店する機会をつくることで、「客数」すなわち「カスタマーになる回数」を無限に創造し得るのである。

「時間刻みの品揃え」を維持するロジスティクス

 この出店戦略のもう1つのねらいは、

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