あなたの会社はいくら?いよいよ始まるアパレル大買収時代と正しいデューデリジェンスの手法

河合 拓
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赤字企業は、どれだけ有名でも価値はゼロ

 さて視点を変え、あなたが買いたい現金製造機に1万円をいれると8000円がでてくるとしよう。あなたはこれをどうするか。当たり前だが、そんなものを買うはずがない。毎回2000円が消えて無くなるからだ。このように言うとそんなことは分かってるよと豪語する人が多い。

  では聞くが、多くの赤字企業をM&Aする企業が絶えないのはなぜか。また、赤字企業にもかかわらず、「今まで手塩にかけて育ててきた超絶ブランドだ」と、赤字にも関わらず強気な値段で売りつける企業があとを絶たないのはなぜか。 

 再三この連載で主張しているように、日本のアパレルは自社の製品・事業を「ブランド」と呼んでいるが、世界の常識でいえばこれらは「分類名」であり「ブランド」ではない。「我が社の価値はいくらぐらいでしょうか」と聞かれ、「赤字ならゼロです、いや、借金もあるから逆にお金を払って、借金分を返しても売れません」と、まずは、原理原則をいう。そうすると、それを嫌って、いわゆる「人権派」と称する「コンサル先生」が登場するわけだ。

  日経新聞によると2021年は資本性劣後ローンの貸し出しが過去最高になっているという。おそらく、こうした記事は、一部の人をのぞいてスルーされていると思うが、この劣後ローンとは、企業の「資本」に組み入れることができる借り入れのことで、一般的に窮地に陥った企業が政府系金融機関から赤字によって食い潰された資本を大きく見せ、民間企業から金を借りやすくするためのローンだ。

  私から言わせれば、赤字体質をなんとかしなければ、金を貸すだけではなんの根本解決にもなっていないと思う(株式の希薄化防止などの資本政策など財務戦略を否定しているわけではないことをご了承いただきたい)。

  問題は、こうした金融スキームの構造を理解することなく、「金引っ張りコンサル」のいわれるままに従い、事業上の問題(1万円をいれると8000円しかでてこない壊れた機械)という本質的なところを直すことなく、安心する金融リテラシーの低さである。いま、金融とDXは事業戦略において表裏一体だ。私の手がけた再生でうまくいったケースは、こうしたスクラムがうまく機能したからである。

 

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