なぜあなたの会社は利益が出ないのか? 間違ったKPIが企業を窮地に追い込む実態

河合 拓
Pocket

最後が企画原価率 (調達原価率)

時価総額世界1位のアパレルとなったファーストリテイリングはこの先どこへ向かうか?
利益計画上極めて重要な指標が企画原価率である(写真はイメージ)

 4KPIの最後が、企画原価率、またの名を「調達原価率」である。これは、MDにとっては利益計画上極めて重要な指標であり、調達部・生産部にとっては守るべき憲法のようなものだ。 

 例えば、正規上代が1万円の商品投入をするとする。MD、経営から与えられた売上、利益計画を達成するため20%あるいは、21%などという企画原価率をこの商品に対して設定する。これは、1万円で売る商品を2000円、あるいは、2100円で生産・調達せよ、という意味になり、調達部・生産部の最も重要な仕事となる。

  しかし、この企画原価率は運用上注意が必要で、例えば、アパレル企業の多くの損益計算書を見れば、原価率は50%-60%程度となっている。これに対し、企画段階の原価率は百貨店ビジネスであれば25%前後、ショッピングセンターであれば35%前後だ。これを、いわゆる「商社外し」によって、商社の通し口銭を下げるわけだが、あまりやり過ぎると、商品品質が激しく落ちてくる。例えば、百貨店ビジネスの場合企画減価率の5倍が上代だから、企画減価率を5ポイント下げれば、上代換算すれば25%も価格が変わってくることになる。具体的に言えば、10,000円の商品が7,500円の商品になるわけだ(商品コスパが変わらないという前提で)

  加えていうなら、コスト削減ばかりやっている企業のP/L変調主義は、企業を窮地に追い込むこともある。例えば、ある世界的高収益企業の企画原価率は45%前後だし、一般的な雑貨もそうだ。両者に共通するのは、損金処理までの期間が長いということである。当然、在庫として倉庫に何年も眠っているわけだからキャッシュフローは悪化するし、昨今、アパレルは直貿化を進めているため、商社金融を使わず先んじて素材を買い付けるということもやっている。

 こうしたことがダブルパンチとなって、損益計算書も貸借対照表も綺麗になるが、キャッシュフローが悪化するということになるわけだ。しかし、ここは、再三述べているように、さまざまなファイナンススキームによって解決は可能だ。先進的な企業は、こうした商品調達から販売、マーケティングや利益計画に財務部を参画させ、あらゆるファイナンススキームを駆使し、あるいは、資金調達にあらかじめ、こうした在庫品の流動化を組み込んでいる。

 

  4KPIは、私が業績不振に陥った企業で最初に行う事業評価の指標である。あえて、丁寧に書いたのは、あまりに短絡的に解決案に飛びつく業界の先行きを案じてのこととご理解いただきたい。「ハイテクを使って来年のMD計画が見事的中。余剰在庫は劇的に削減」などという言葉に踊らされてはならない。世の中の動きとプロセスの見直し、財務戦略と業務戦略の融合など、基本の中に真実がある。ハイテク活用は、その後の話だ。

 

プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

1 2 3 4 5

人気記事ランキング

© 2021 by Diamond Retail Media