なぜあなたの会社は利益が出ないのか? 間違ったKPIが企業を窮地に追い込む実態

河合 拓
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最も大事な指標プロパー消化率

 プロパー消化率は、4KPIの中で最も重要な指標である。このKPIを5ポイント上げるだけで(後述するオフ率とのバランスにもよるが)、営業利益率は10%近く改善することもある。プロパー消化率の向上は、何にもましてアパレル企業が改善すべき指標であり、プロパー消化率の向上は、利益率のみならず売上さえも上げ、余剰在庫さえも削減できる。

 このプロパー消化率は、ある期間内での総投入量に対して、どの程度が正規価格(いわゆる定価)で売れたのかを、金額ベースで算出する指標である。

 なにをいまさら、と思う人も多いと思うが、それでは、以下の2つの質問に答えられるだろうか? 

  • 本決算が3月末の企業が、同一デザインの商品が決算期を跨いで4月以降も販売を続ける場合、当該商品パフォーマンスの分析は、あくまでも会計年度終了時の数字を使うやり方は正しいか

  • プロパー消化が順調に進んでいるかどうかを計測するため、月別にプロパー消化率を見ながら巡航速度を見ている管理は正しいか

 この2つとも正解は「NO」である。理由はシンプルだ。

 プロパー消化率を計測する際、分母は「総投入量の正規上代見合い金額」、分子は「正規販売金額」である。月またぎ、あるいは、期ずれを起こした場合、納期が遅れる(分母が少なくなる)ほどプロパー消化率は向上するからだ。

 例えば、合計 1000枚の投入量を2月に300枚、3月に300枚、4月に400枚という投入計画を立てたとする。ところが、納期遅れが発生し2月に100枚しか納品できず、3月にも100枚、4月に帳尻あわせで800枚もぶち込まれたケースだ。

 当然、現場では過激なやりとりが繰り広げられているが、経営にはそんな声は届かない。

 そして、こうした現場のやりとりを知らない経営層が、上がってくる管理会計資料を分析すれば、2月は完売(プロパー消化率は100%)で、3月は、例えば90%で「めでたく決算終了」となる。「来期も楽しみだ」と微笑んでいたところ、納期遅れ分の800枚もぶち込まれ、さらに今どき3ヶ月も継続販売できるような商品はユニクロくらいだから800枚のほとんどが売れ残り、例えば、「期初からプロパー消化率は10%前後で推移」という惨憺たる結果を目の当たりにすることになる。これは、本当にあった話だ。

 私は、アパレル企業の経営企画部の人々と話すたび、財務視点の期間収益と消費者視点のニーズ的中率を激しく混同していると感じることが多い。企業の成績簿である財務3表と関係なく、アパレル不況の今だからこそ、あくまでも消費者視点での管理=管理会計が必要なのではないかと思う

 このケースにおいては、当該商品が売れると判断したタイミングを起点に、売れなくなるとマーチャンダイザーが判断した時を終点として、この商品を使った事業が終了した時点ではじめて商品パフォーマンス評価するのが原則だ。中間巡航速度などは存在しない。もし、期間収益を会計年度や月次で追いかけたいというのであれば、予実計画対比で比較して見るべきだ。したがって、『11月のプロパー消化率 90%』などというのは自己矛盾の管理なのである。

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