過去最高業績を達成したバローHD 2030年までに営業収益1兆円超を達成するための戦略とは

松尾 友幸 (ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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経営資源を地域の課題解決に生かす

 バローHDは、30年までの中長期経営方針「バローグループ・ビジョン2030」「サステナビリティ・ビジョン2030」を発表した。その骨子を説明すると、グループの商品やサービス、決済機能などを通じて地域を便利に、豊かにつなぐ「バロー経済圏」の構築、商品力で選ばれる「デスティネーション・カンパニー」の実現、持続可能な社会に向けて地域社会の発展・社会文化の向上をめざすというものだ。

 これらの実現に向け、基本方針として「商品で繋ぐ」「顧客と繋がる」「社会との繋がりを意識した経営」を掲げる。303月期までに営業収益1兆円超、営業利益480億円超、経常利益500億円超、投下資本利益率(ROIC9%を達成する計画だ。

 業態を越えた競争が加速するなか、「生き残れるSM、生き残れる企業とはどういうものかということを追求してきた」と田代会長兼社長はコメントした。「これまでめざしてきた平均的なSMでは、なんでも揃っているが買うものがない状況で、総合スーパーと同じく衰退してしまうのではないか」(田代会長兼社長)と危機感を持って現在取り組んでいるのがDSへの転換だ。生鮮3品の売上高構成比は50%を超えるようになってきているという。「近い」という優位性をDgSやコンビニエンスストアに奪われつつあるなか、「競合店を越えて」来店してもらうための店舗づくりを続けていく考えだ。

D・Sに転換した「スーパーマーケットバロー水口店」の水産売場
D・Sに転換した「スーパーマーケットバロー水口店」の水産売場

 また、地域社会の発展についても、地域市場の再生など、田代会長兼社長は行政が対応しきれていない地域の課題解決に取り組みたい意思を示した。健康課題の解決も重要だと認識し、以前から請け負っているデンソー(愛知県/有馬浩二社長)社員の健康管理のような取り組みを拡大させるほか、SM事業やスポーツクラブ「アクトス」でのノウハウを生かした介護支援や食品の提供などに、行政と協業しながら取り組んでいく。「グループのさまざまな経営資源が地域の役に立つ時期が来ている。これらを生かし、地域の経済圏をつくっていきたい」(田代会長兼社長)

 

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記事執筆者

松尾 友幸 / ダイヤモンド・チェーンストア 記者

1992年1月、福岡県久留米市生まれ。翻訳会社勤務を経て、2019年4月、株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。流通・小売の専門誌「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属。主に食品スーパーや総合スーパー、ディスカウントストアなど食品小売業の記者・編集者として記事の執筆・編集に携わる。趣味は旅行で、コロナ前は国内外問わずさまざまな場所を訪れている。学生時代はイタリア・トリノに約1年間留学していた。最近は体重の増加が気になっているが、運動する気にはなかなかなれない。

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