ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営24 リアルリテールがネットリテールに勝てない明白な理由
リアルは有限、ネットは無限
ストアリテールやモールリテールなどに共通するものがある。それは他でも無い「不動産」である。土地建物と言う不動産が無ければ、リアルリテールは成立しない。実はここに最大の弱みがある。
店舗不動産は、物件探し、交渉と契約、店舗設計と造作、在庫投資、販売員の採用、賃料や保険の負担などのコストが必要となる。不動産を探すこと、保有することには多くの人件費とコストと時間が必要であり、賃借すると賃料リスクを負う。コロナ禍で休業となり固定費の重圧に耐えられなくなったテナントも多い。
リアルリテールに必要な不動産の特徴は有限性である。狭い国土の日本において商業用に適した場所や不動産はそう多くない。また、その適地を手に入れるためには相当の費用と時間が掛かる。今、人口減少によって地方から順に商業施設の適地が減少し店舗閉鎖が続くのは、不動産の物理的な有限性と商圏市場の有限性、この2つの有限性によって後退が進行しているのである。
では、ネット上にECサイトを立ち上げるために何が必要か。それはURLの取得とサーバの確保だがそこに有限性はあるか。ここが不動産との違いである。
佐世保から中継するジャパネットたかたも店舗不動産という有限性に縛られないビジネスの一つであるだろう。
SCにこだわらないSCとは!?
このようにリアルでは、人と不動産が無ければ成立しないが、ECは、リアルな店舗を必要としない。とすれば、リテールビジネスの展開にいつまでもリアルにこだわる必要はないはずだ。こだわるがあまり前出のようにSWOT分析でリアル価値の優位性を求めようとする気持ちも分からなくもないが、その分析をもう一歩進めたいと思う。
さて、そろそろ今号の結論に入りたい。リテールにおいて有限の不動産より無限のネットに軍配が上がることには誰しも納得するだろう。だからと言って、SC事業者にEC事業者に職替えをしろというつもりはない。不動産の有限性とネットの無限性をテーマにしているのは、あくまでリテール領域での話である。
だからSC事業者は、「何が売れるか」「どうやって売るか」「対前年比」そればかり考えるのではなく、有限である不動産価値をいま一度見つめ直すその先に答えがあるはずだ。
前号でも主張したが「物売りはネットに任せる」それぐらいの潔さを持って考えてみてはどうだろうか。
要するに「SCはShopping Centerの略」と決めつけている限り、ネットに勝つことはできない。この結論が、前号で指摘したパークリテール(Park Retail)につながる。是非、前回と合わせて読んでいただきたい。
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒