ZHD戦略分析 PayPayによる電子決済軸にグループ経済圏拡大、国内ECの「覇権」を奪う

油浅健一
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「シナリオ金融」を重点強化し全体の底上げ

 同社はこうした情報収集からのシームレスな購買体験を「シナリオ金融」とネーミングし、特に金融サービスの提供でその拡充に力を入れている。

 実際、Yahoo!ショッピング、PayPayモールにおいて「あんしん修理保険」の契約件数は、「超PayPay祭」1日で4万3357件と過去最高を記録。これは、商品購入時に3年、5年など任意に保険を付与できる金融商品で、「キャンペーンやユーザーインセンティブといった従来のマーケティング手法を全く使わずに獲得した実績であることが非常に特徴的だ」と川邊CEOも手ごたえを実感しているという。

 商品購入時、そのタイミングであると便利と思われる関連商品が提案され、その場で決済できる。押し付けるわけでもない、自然な流れの中での商品訴求と決済の手間を最小化した購買体験だからこそ実現できた数字といえるだろう。

 ヤフーショッピング、PayPayモールにおいても、年平均成長率がプラス25.6%と高い成長を記録する中で、PayPayやYahoo!カードによるインハウス決済比率が過去最高水準の68.2%に到達。川邊CEOも「 PayPay を起点としたグループ経済圏のユーザーの囲い込みが進んでいる」と明かし、電子決済がさらなら成長のキーと連動することを強く認識している。

 情報を提供することでは圧倒的な強さがあったヤフーにとって、支払いまでをワンストップで完結できることで、顧客の囲い込みが可能になる。逆にいえば、これまでは日本最大のポータルサイトとして膨大な数の見込み客とアプローチしながら、みすみす他のECモールへ顧客を流していたともいえる。

国内「2強」にどう立ち向かうのか

 こうした部分に長けているのがライバルの楽天だ。ECモール「楽天市場」では金融とポイントの2段構えで顧客ガッチリと囲い込み、「楽天経済圏」を構築。日本のECではアマゾンに次ぐポジションを強固なものにしている。

 同社が2強と並び、「日本市場におけるECナンバーに躍り出る」ためには、「当グループの最強セットである情報、コミュニケーション、決済」(川邊CEO)のシナジーを最大化することが必須となる。

 そのための施策として同社は「短期的には重複する事業領域の再編や新サービスの開始」を挙げ、まずはLINEとの経営統合による効果を最大化させるための事業やサービスの整理・整備に重点を置くことを明かした。

 並行して、セキュリティ面・ガバナンス強化を推進しつつ、「売場としての質の向上をできるよう物流やロイヤリティプログラムの改善 、LINE のコミュニケーション機能を最大限活用したソーシャルコマースの展開。また、各金融サ―ビスのリブランディングを皮切りにマネタイズ基盤となる会員数銀行口座数の拡大を目指す」と各アセットを磨き上げながら地盤固めを進めていく。

 その上で中長期には「 Yahoo JAPAN、 LINE、 PayPay の日本最強アセットを横断的に活用し事業シナジーを実現できるよう取り組んでいく」と述べた。

 デジタル化が標準となるニューノーマルの時代の覇権争いは、単なる顧客の奪い合いに留まらない。むしろ、いかに顧客を囲い込み、そこからどれだけデータを抱え込めるかが焦点といえる。だからこそ入り口と出口を抑え、顧客情報をデータとして吸い上げ、AIなどで解析し、いかにマーケティングにつなげられるかが肝となる。

 情報、コミュニケーション、決済を押さえ、さらなる飛躍への盤石の体制を整えたZHD。だが、グローバルではGAFA、BATがはるか先を行く。国内ではアマゾン、楽天が立ちはだかる。

 金融領域の動きは激しく流動的で、変化のスピードも速い。同社は結果を出すひとつの目安として「2020年前半」を設定する。その時までにPayPay、LINEが電子決済領域でどれだけの影響力を持っているのか。まずはそこに注目だ。

 

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