“全国”視点のビッグデータマーケティングが、個店経営には意味がない理由を理解しよう

島田陽介(島田研究室代表)
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「マーケティング」という“全国”視点

島田研究室代表 島田陽介 氏
島田研究室代表島田陽介 氏

 個店経営は、単なるチェーン運営方法の転換ではない。個店経営とは、決定的な“視点”の転換である。

 前回解説した「画一売店チェーン」の次に考えるべきは、「ナショナルブランド(NB)」と、それを支える「マーケティング」というテーマだ。画一売店チェーンはあくまで「販路」、すなわちチャネルであった。そのチャネルを通るモノの多くはNBである。というより、まず消費財製造業の工業化が先にあり、さまざまな分野の消費財がNBとして大量生産され、それに見合う「全国流通チャネル」として、画一売店チェーンの出現が待ち望まれ、流通革命が実現したのである。

 それまでNBは、家電、医薬品、化粧品などで見られたように、既存の商店街にある「業種別商店」を系列化することで、チャネルを確保していた。だが業種別系列店は、特定製造業の商品しか扱えず、お客にとって選択の不便があった。そして多くの場合、売場面積が狭く、限られた品種しかおけなかった。ある商圏にその業種店が3店しかなければ、系列店を持てるのはこの3社に限られた。

 だが「画一売店チェーン」なら、主な製造業の主な品種を網羅的に扱うことができる。複数の製造業の商品を扱う複数店が同じ商圏で争えば、製造業にとっては商圏をより徹底的にカバーできる、という意味で好都合であった。

 ではNBとは何か。それは文字通り、全国どこでも売れる、かつ誰でも買う、「最大公約数の商品特性(品質)」を実現した商品である。それは、個店経営を創始したセブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)が、当初はNBを扱いつつも、徐々にそのほとんどをセブン-イレブン独自の「ストア・ブランド(以下、SB)」に切り替えていったことからも、逆説的ではあるが、証明されている。

 大型店の多かった画一売店チェーンと異なり、セブン-イレブンの30坪の売場面積に3000品目を揃えるには、小サイズの商品が必要だったという理由もある。だが、それよりも重要なのは、商圏が近隣の数千世帯に限定されており、商圏拡大は不可能である以上、①それぞれの個店の近隣客を常に来店する「カスタマー」にし得る、商圏に合った独自性を持った、②セブン-イレブンのみで買うことのできる、商品群が必要だったことにある。前回、「個店経営」に先行する「画一売店チェーン」から論じたように、SBに先行するNBの本質を一度問うてみる必要がある。

「セブンプレミアム」商品
業態特性上、商圏拡大は不可能だったセブン-イレブンは、近隣のお客を「カスタマー」にし得る、かつ自店のみで買うことのできる商品群として「セブンプレミアム」を拡充していった

コンシューマーとカスタマー

 そして、そのNBの商品特性の決め手になったのが「マーケティング」である。

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