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レシートは語る第3回ヤオコー コロナ禍で突出して業績を伸ばせた理由

 ソフトブレーン・フィールド(東京都/木名瀬博社長)は、全国に約50万人の協力モニターを擁し、日本初のレシートによる購買証明付き・購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データPoint of Buy(ポイント・オブ・バイ:以下、POBデータ)」を有している。月間300万枚のレシートを収集し、リアル消費者購買データベースとしては国内最大級の規模となる(提携サイト含める)。
 このPOBデータと協力モニター(以下、POB会員)へのアンケート調査を活用すれば、消費者から見た小売りチェーンの実態を明らかにすることができる。本連載では毎回、業界で関心の高いテーマを設定して独自調査を実施し、その結果をレポートする。

 連載第3回の今回は、新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大下において既存店売上高が大きく伸長したヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)にクローズアップ。同社はなぜ食品スーパー企業のなかでもとりわけ業績を伸ばすことができたのか―――。

購入点数・金額の伸びは
他の優良チェーン以上!

 まず、コロナ感染拡大前後でのヤオコーの利用動向の変化を見てみよう。今回は比較・参考として、総合スーパーや食品スーパーを中心に展開する「イオン」、価格訴求型食品スーパー「オーケー」、大手食品スーパー「ライフ」の集計結果も掲示する。

 図表1は、コロナ感染拡大前の2020年1月と、感染拡大から半年ほど経過した9月における各チェーンのレシート1枚当たりの平均購入点数と平均購入金額をグラフ化したものだ。

図表1●2020年1月と9月の購入状況(レシート1枚当たりの平均購入点数と金額)

 「ヤオコー」は、買物1回あたりの平均購入個数が、1月7.4個→9月8.7個に、平均購入金額においても、1月1387円→9月1669円と282円増加。コロナ禍でヤオコーは購入点数・金額をともに伸ばし、その伸び幅は4チェーンのなかで最も大きいことがわかる。

選ばれる理由は
「生鮮」「総菜」「販促」

 なぜ「ヤオコー」は消費者に選ばれているのか。図表2は、「ヤオコー」「イオン」「オーケー」「ライフ」を日常的に利用すると回答した人にその理由を尋ね、回答者が多い項目順に並べたものだ(複数回答)。

図表2●各チェーンを日常的に利用する理由

 結果を見ると、「ヤオコー」は他の3チェーンと比較して、とくに下記3つの項目を理由に挙げる人の割合が高いことがわかる。

■「生鮮食品の鮮度」(ヤオコー31.5%、他3社チェーン14.5%)
■「総菜類の充実」(ヤオコー15.1%、他3社チェーン7.4%)
■「ポイントやお得なサービス」(ヤオコー31.5%、他3社チェーン20.1%)

 コロナ禍で外食が難しくなり、内食や中食を中心とした生活が続くなか、ヤオコーの生鮮食品の鮮度の高さや、総菜類の充実ぶりが、消費者から支持されているようだ。

 また、「ポイントやお得なサービス」の評価が高いことから、同社の販促施策が消費者の心をつかんでいることもわかる。回答者の実際のコメントでは「毎月さまざまな商品の特売期間がある」「他店ではなかなか値引きしないシャンプーやハミガキもお得に買える」などの声が見られた。

 これについては、ヤオコーは近年、独自の月間販促策として「ワイン」や「加工肉」「お米」…などの約30の各カテゴリーで月に1回、1日~複数日にわたって、全品20~40%OFFとなる日をつくり、ほとんど毎日何かしらの低価格を訴求する企画を実施している。こうした割引率の高い、強気の販促策もヤオコーの好業績につながっているといえそうだ。

“優等生”ならではの高スコア!
一方で低評価な品種も・・

 最後に商品カテゴリー別の消費者からの評価をみてみよう。図表3は、競合他社よりも総合的(品揃え・商品と価格のバランス・鮮度など)に判断して、「優れている」と答えた人の割合をグラフで示したものだ(複数回答)。

図表3●競合他社よりも総合的に判断して優れていると感じるカテゴリー(品揃え・商品と価格のバランス・鮮度など)


 ヤオコーは生鮮3品においての評価が「精肉(41.4%)」「鮮魚(31.5%)」「青果(30.1%)」とすべて3割を超えているのが特徴だ。また「総菜(24.7%)」や「地場野菜や地元の食材(19.2%)」のポイントも高い。

 一方で、最近ヤオコーが直輸入ワインなどの品揃えを拡充している「酒類」や、需要の伸長を受けて多くのチェーンが販売を強化している「冷凍食品」については、相対的に評価が低い結果となった。

 食品スーパー業界の“優等生”と言われることも多いヤオコー。その名が表すとおり、食品スーパーのなかでも重要カテゴリーである総菜を含む生鮮4品において総じて高いスコアを叩き出している点が、コロナ禍でひときわ業績を伸ばすことができた大きな要因と言えるのではないだろうか。


【調査概要】
調査対象:全国のPOB会員アンケートモニター 3362人
調査日時:2021年4月3日~5日  
調査方法:インターネットリサーチ
調査機関:ソフトブレーン・フィールド

【データ詳細】
図1)POBデータより算出
1月レシート枚数 ヤオコー(1514枚)、 イオン(9779枚) オーケー(3365枚)、 ライフ(5005枚)
9月レシート枚数 ヤオコー(2144枚)、 イオン(1万4515枚) オーケー(5884枚)、 ライフ(7651枚)

【執筆者】

執筆者

山室直経(やまむろ・なおつね)
神奈川大学経営工学科卒業。パソコンメーカーを経て、米リサーチ会社にてコンサルティング業務を学ぶ。その後、大手家電量販店子会社のパソコンメーカーで経営企画室に従事。計数管理とERP導入による業務改善などのプロジェクトを経験した後、2012年3月ソフトブレーン・フィールド入社、消費者購買データ事業の新規立ち上げを行う。
現在はデータを軸とした事業開発と当社の基幹システムのDX戦略を担う