コロナ禍で強さを発揮! “回らない寿司屋”から始まったスシローがデジタルに注力した理由とは

若狭 靖代(ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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コロナ禍で殺到したテイクアウト注文

 このような流れで、“ほぼ完成された”と言っても良いほどのシステムを備えたスシロー。ほぼ毎月、前年を上回る売上を叩き出し好調を維持していたが、そこに突然押し寄せたのがコロナ禍だ。

20年4月に発令された緊急事態宣言による一部店舗の休業などの影響を受け、スシローの同時期の売上は昨対比で約半分まで落ち込んだ。外食が敬遠され、営業している店舗にもイートイン(店内喫食)のお客がほとんど来ない。その代わり各店舗には、通常の2〜3倍のテイクアウト注文が日々殺到するようになった。大量の注文を捌き、売上の回復を支えたのはデジタルの力だ。

 スシローに限らず回転寿司業界にはもともと年に数回、爆発的にテイクアウトの注文が殺到する日がある。年末・お盆や、母の日などのイベントがある日だ。そもそも回転寿司は、平日に比べて休日の売上が倍程度になるという特徴があるが、これらのイベント時の売上は、休日売上からさらに跳ね上がるという。スシローは、この突発的な需要増加を十分捌ききれるようテイクアウト注文のアプリ・ネットへの誘導や、在庫がないのに注文を受けてしまうのを防ぐ受注管理システムの導入をあらかじめ行っていた。これが、コロナ禍での需要を取りこぼさず、危機をいち早く脱出するきっかけになったのだ。「もしデジタル化を進めていなかったら注文を受け切れず、売上は回復せず、危機を迎えていたかもしれない」と小河氏は話す。

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