ドラッグストアの針路 #9 インバウンド消滅で鮮明になるチェーン間格差

森田俊一(流通ジャーナリスト)
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「フード&ドラッグ」は軒並み好調

 インバウンド需要の苦戦が続く一方で、業績を伸ばしているのが食品を強化したドラッグストアフォーマット、いわゆる「フード&ドラッグ」を展開する企業だ。

 いまや食品強化型ドラッグストアの代名詞的存在となっているコスモス薬品(福岡県)の21年5月期第2四半期の売上高は、対前期比12.0%増の3641億円、営業利益は同52.9%増の182億円だった。コスモス薬品ばかりではなく、クスリのアオキホールディングス(石川県)、「ゲンキー」運営のGenky DrugStores(福井県)なども業績を伸ばしている。

 こうしたフード&ドラッグ業態の伸びを横目で見ていた大手も動き出しており、ツルハホールディングス(北海道)は今期(21年5月期)中に全約2400店のうち700店に生鮮食品の売場を設置し、来期(22年5月期)中にはさらに200店を上乗せする計画を打ち出している。業界トップのウエルシアホールディングス(東京都)も店舗数はそれほど多くないとみられるが、生鮮食品の導入を進めている。

 コスモス薬品は生鮮食品を扱わず、加工食品や冷凍食品、チルド食品といったカテゴリーに絞った形で食品売場を展開してきたが、大手チェーンの生鮮食品への相次ぐ導入拡大などもあってか、本拠地である九州地区などで生鮮食品の取り扱いを開始。じわじわと扱いを増やしている。

 と言っても、ドラッグストアの生鮮食品売場の多くはコンセッショナリー(委託販売)であり、今後本格的に力を入れてくかどうかは不透明だが、医薬品や日用品があり、食品も買える便利な店であれば消費者の支持が集まるのは間違いないだろう。今後もドラッグストア業界では、商品政策を柔軟に変化させたチェーンと、そうでないチェーンの格差が拡大していくのか――。

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