死に体なのにアパレル産業の倒産が少ない理由…TOBによる金融主導の業界再編激増とこの先起こること

河合 拓
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見えるモノにしか貸さない銀行と、見えないものに投資をするファンド

kuppa_rock/istock
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 私はファンド、特にプライベート・エクイティ(非上場株)に大きな未来を将来性を感じている。映画「ハゲタカ」などによって、すっかり「悪玉」のイメージがついたファンドだが、それでは、キャッシュフローがマイナスの企業に貸し出ししている銀行は、はたしてまともといえるのか、ということだ。

 銀行などは、昔から担保主義といって、金が返せない場合を想定して、その金に相当するものを担保にいれるというやりかたが一般的だ。しかし、投資ファンドは、戦略コンサルタントなどを使い、徹底して市場性、競争関係、その企業が持つ強みなどを分析し、成長の蓋然性を確認できたら投資をする。つまり、目に見えるものにしか金を貸さない銀行と、目には見えないが論理がしっかりしている事業計画にリスクを取って投資をするのが投資ファンドなのだ。
 私は、正しい戦略と投資が融合すれば、必ず産業は復活できると思う。実際に、私が手がけてきた事業再生は、半分以上が商社等の親会社、または、投資ファンドと組んだものだった。紙切れの束をおいて、企業が復活することなどあるはずがない。私の経験から言っても、そういうケースは大阪の餃子屋一件だった。

 だから、私は、正しい戦略を前提とした投資ファンドによる共同プレイこそが日本の産業を救うと信じているのだ。

 補助金漬けのゾンビ企業

 特定の産業に国民の血税を使っているケースもある。信じられないことに、ほとんどの企業は赤字だった。なかには黒字企業もあったが、それは「補助金」がもらえるからだった。

 私はその現場で再生の舵取り役を頼まれていたのだが、彼らからは「どうせ赤字でも潰れないのだから、やりたいようにやらせてくれ」「こんな報告書をつくって補助金をつかわせてくれ」と詰め寄られたものだ。私は、血も汗も流してきたプロとして、そんな仕事はやったことがないし、やるつもりもない。お断りさせていただいた。

  このように、「お金」とはキャッシュフローがポジティブ(給与が30万円なら、生活費が29万円以下になること)になることが前提である。
 もし、アップサイド(売上)が、マイナス成長なら、いくらリストラをしても、必ずいつかブレークイーブンを割る。こういうケースにおいては、アップサイドを成長させる「成長戦略」が必要となる。それも、絵に描いた餅でなく、絶対に確実な成長戦略だ。リストラや追加融資は、こうした成長戦略が軌道にのるまでの時間稼ぎなのだ。

 しかし、こうした基本を知らないばかりに、リストラを小まめに何度もやる経営者があとをたたないのである。

 

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