アフターコロナのアパレル業界はこうなる 世界一のユニクロに待ち受ける試練、百貨店は100店舗時代へ

河合 拓
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百貨店は店数は減るが、付加価値は上がる

都内百貨店の様子
百貨店の数は縮小するが、付加価値は上がる(2019年 ロイター/Issei Kato)

 最後に、百貨店について書きたい。私が「ブランドで競争する技術」を10年前に書いたとき、日本に百貨店は250あった。今は、とうとう200を切り、数年後には100店舗になるという人もいる。

 しかし、これをもって百貨店危機と言わんばかりに騒ぐのは早急だ。日本の百貨店というのは、他国のデパートメントストアとは違い、独特の位置にある。まず、日本の百貨店は、日本人の文化に深く根ざし、特に地方にゆけば、百貨店城下町を形成し、冠婚葬祭から夏と年末の贈答品まで、日本人の生活と切っても切り離せない関係にある。しかも、欧米人から見て「契約概念に希薄なアジア人」というレッテルを貼られている中で、日本人ほど真面目で嘘をつかない国民はいない。だから、コロナ以前には、こぞってアジアの人間が日本に押し寄せ、なぜか日本製品以外のブランド商品を日本で買うという、奇妙な現象が起きたのだ。

 このように、百貨店と一括りにいっても、高額商品を売る好立地の百貨店という意味合い、日本人の文化に根ざした百貨店、そして、いわゆるマナーの良い国の百貨店という3つの意味合いが、日本の百貨店の独自性を保っている。確かにバブル期に乱立した百貨店の数は大きく縮小するかもしれない。しかし、日本の百貨店は、日本の文化そのものだ。百貨店は「らしさ」を残したまま確実にこれからも存在すると私は思う。

 さて、「河合拓のアパレル改造論2021」のスタートとして、アフターコロナを視野にいれたアパレル業界の将来予想をしてみた。今年は東京オリンピックも開催される予定だ。日本は、英知を絞り、必ずや東京でオリンピックを開催し世界の注目を浴びるのと同時に、停滞した経済の立て直しの弾みをつけるだろう。今年は、ぜひ良い年になり、また、大きなアパレル業界変革のトリガとなって、作りすぎ問題、環境問題、産業の弱体化問題など、様々な課題を解決する年になってもらいたいと心から思う。

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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