伝統的マーケティングは企業を窮地へ “個客”追いかけるデジタル時代の “Digital-MD” の全貌を解説する

河合 拓
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マーチャンダイジングは石器時代の言葉

 さて、本日は、デジタル化が進んだ先、それも、この2-3年で起きるMD業務の根本変化について語りたい。

 そもそも「マーチャンダイジング」という言葉は、「商品」という意味だ。つまり、MD計画というのは「商品計画」なのである。過去の商品の売れ行きの趨勢を指数化し、52週に分解して売上のアップダウンと売価の関係を分析する。こうした一連の分析作業によって、将来も同じような動きをするだろう、という仮定の下、さらに、そこに積極的なプロモーション施策 (プレミアム要因)、あるいは、消費増税(ディスカウント要因)などを加えて微調整する。賢明なマーチャンダイザーであれば、街を見、店を見、そして、顧客の動きや装いを見ながら商品計画を立てOTB (仕入枠設定)を設計する。複雑に組織分化された企業内部では、OTB計画がなければ調達部が勝手に必要以上の商品を“計画通り”おこなってしまい、余剰在庫となるからだ。余剰在庫を生み出すメカニズムである。

 ここで賢明な読者は気がついたと思うが、こうした一連のMD計画には「顧客」という概念が全く無いのである。今、ネットにしてもリアル店舗にしても、顧客の動きや導線は手に取るように分かり、”個客“(一人ひとりの顧客)の購買動向もビッグデータアナリティクスという技術を使って企業のデータベースに中にあり、分析することが可能なのに、MD計画時には、こうした“個客”データは商品計画とリンクしていない。むしろ、旧来型のMD業務で調達した後に、受け入れた商品をどのように売るか、というところにビッグデータは活用される。本来、そもそも、どの程度仕入れるべきかという根本のところにこそビッグデータは使うべきなのだ。

 化石時代のMD業務は、まず計画を立て商品調達を行いセンター倉庫に投入。顧客データを活用しながらセールスフォースなどのソリューションを使って、メルマガやクーポンを送る、あるいは、購買時にリコメンドする程度である。私が過去から再三述べているように、SPA(製造小売業)という言葉が日本を席巻し、それぞれの企業が勝手にその意味を解釈し、自分たちはSPAであるとうそぶいているが、その実態は、製販は依然分離したままであるというのが実態だ。

 

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