2020年3月期に31期連続で増収増益を達成するなど、業界屈指の収益力を誇るヤオコー。その強さの源泉となっているといわれているのが、同社が標榜する「チェーンとしての個店経営」である。ヤオコーの「個店経営」とはどのようなものなのか。同社の「個店経営」の礎を築いた名コンサルタント、島田陽介氏が解説する。
優れた収益力を支えるヤオコーの「個店経営」
日本の食品スーパー(SM)の創成期において、売上規模を速く拡大させ、規模の優位性によって商品を安く調達し、収益性を高める手段として広がっていったのが、標準化した店舗を次々と出店する、米国型の画一的なチェーンストアである。
これに対し、地域に密着する店舗が、商圏の特性や消費者の需要に柔軟に対応し、店づくりを主体的に実践するのが「個店経営」だ。ヤオコーは、2001年3月期から03年3月期までの第3次中期経営計画で「個店経営の推進」を掲げ、川野清巳前社長のもと、個店経営への転換を図ってきた。ヤオコーの優れた収益力は、個店経営の寄与するところが大きい。
コロナ禍でもヤオコーの業績は好調だ。21年3月期第2四半期の既存店売上高は対前年同期比13.4%増と2ケタ増となった。巣ごもり需要や内食需要が高まるなか、総菜や鮮魚、ベーカリーといった主力カテゴリーのほか、豊富なラインアップのストアブランド(SB)「Yes!」によって、多くの消費者から支持を集めている。
ヤオコーのSBは、「ヤオコーの店舗でしか購入できない商品」という点で、ナショナルブランド(NB)と同等の商品を廉価で販売する、一般的なSMのプライベートブランド(PB)とは本質的に異なる。ヤオコーでは、10年以上にわたって毎年2回、米国研修を実施している。経営層から店長、パート従業員までが現地の店舗を定期的に視察し、優良なSMの取り組みを学んできた。
なかでも、ヤオコーのMD(商品政策)や売場づくりに大きな影響を与えているのが、ウェグマンズ(Wegmans)、ホールフーズ・マーケット( W h o l e F o o d sMarket)、トレーダー・ジョーズ(TraderJoe’s)などである。
これらの企業は、SB中心の品揃えで、消費者から高い満足度を獲得して売上高を堅調に伸ばしているという点で共通している。ヤオコーの店舗で見られる、低めの陳列棚や対面式の売場、スポット照明などを導入するなどの取り組みは、ウェグマンズらの売場にならったものだ。
ここでポイントとなるのは、SB中心の品揃えであるという点だ。SM企業が在庫リスクを負うSB商品は、店舗ごとに在庫を適正に管理し、販促施策を講じる必要がある。ヤオコーは、個店経営のもと、商圏内の消費者の購買行動を熟知する店長や売場主任が中心となってこれらを着実に実行、SB商品を含めた独自の品揃えによって競合店との差別化に成功している。
個店経営を進化させる「データドリブン経営」とは
個店経営への転換において課題となるのが、
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