埼玉県小川町に開業した青果店から、業界屈指の有力チェーンとなったヤオコー。同社は、どのようにして現在のような「強さ」を獲得したのだろうか。ヤオコーの強さと、現在の「食生活提案型スーパーマーケット」になるまでの経緯を、元常務取締役の大塚明氏に語ってもらった。
ヤオコーの強さを支える人材への積極投資
ヤオコーが現在のような強い企業になったのは、複数の要素の積み重ねであると思います。私が考える「ヤオコーの成長要因」をいくつか思いつくままに、まず組織面から挙げてみます。
ひとつは、経営者のバランスのよさです。青果商だった八百幸をスーパーマーケット(SM)・チェーンのヤオコーに発展させた川野トモ氏の商売に対する精神(心)。その基礎のうえに、出店政策や教育政策といった企業経営を織り込んだ、トモ氏の長男で現会長の川野幸夫氏。マーチャンダイジング(MD)に長け、ヤオコーの商品力を磨き上げ「商品経営」を徹底した、次男で現相談役の川野清巳氏。この絶妙なバランスこそが、ヤオコーにおける成長の大きな原動力でした。
もうひとつは、人材の採用・育成への有効な投資です。経常利益が約4500万円だった1975年に、就職情報誌『リクルートブック』の大卒採用広告に約1500万円を投じたことは、人材を何よりも重要視するヤオコーらしい話として有名です。
そしてヤオコーは、そのようにして採用した人材を厳格に育てます。その中では、一旦店長に昇進しても、降格し店次長や主任に逆戻りすることもしばしば行われております。もちろん、学び直して店長に復帰できる機会はいつでも用意されていますが、そうした信賞必罰、“厳しさ”をあわせ持つ組織でもあるのです。
次に、外部人材の巧みな登用です。企業の成長の過程で、さまざまな企業の出身者を採用し、彼らが持つ技術や知識を最大限に生かしてきました。それは小売出身者に限りません。金融関係など異業種の企業出身者も積極的に採用し適材適所に登用し、あらゆる部門において専門性の高い組織をつくり上げたのです。
小商圏型店舗でドミナントを形成
出店政策や店づくりにも、ヤオコーの成長要因があります。
そのひとつが
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