「ECは安上がり」の大勘違い 5億円売上げるためのマーケティングコストは1億円を超える事実

河合 拓
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 それでは、仮にCPAが極めてうまくいったとして、15,000円だとしよう。

 今の衣料品の平均販売価格は4000円というところで、粗利(限界利益)が40% (多少のオフ率を加味して)であれば1600円だ。つまり、10個売ってはじめて1000円の利益となる。それでは、5億売上をつくるための費用はいくら必要で、利益はいくらになるかを考えてみよう。

 5億の売上を作るためには、平均単価が4000円の商品は12万5000個売らねばならない。月額に直せば、毎月約1万個である。このあたりで、大体腰を抜かすことになる。さらに、そのために必要なマーケティングコストは、売上を5億円とすると4100万/月となり、この50%がリピート顧客、50%を一度きりの離脱顧客とすれば、マーケティングコストは合計で約1億5000万となる。本来は、こんな簡単な計算でなく、セット率、離脱率、リピート率など複雑な式で計算しなければならない。一度買った客の50%が12ヶ月毎月買うなどということはあり得なく、(ロイヤルカスタマーでも年間で5-6回だ )ので、さらに精緻に計算すれば、マーケティングコストはもっと上がるだろう。

 加えて、ここで得られる利益である。粗利 (限界利益)を40%とすれば、5億円の売上で粗利は2億だ。本来は、売れ残った在庫の償却、値引きなどが加わるのだが、神風が吹いて、商品が全てオフ率一桁台で売れたとしても、マーケティングコストが1億5000万円掛かるので、残りの5000万円から人件費、システム減価償却、個配の物流費などを引いて、はじめて営業利益が出る。

 人員を、例えば年収500万の人間が3名で1500万、物流費が売上の5%で2500万、システム開発に1000万で5年減価償却として200万円で合計5200万円。締めて、200万円の赤字である。つまり、5億の売上を上げるために、3人の人間で仕入れた、あるいは、作った商品をすべて定価で売り切り、CPA to conversionが15000円というプロフェッショナル級のマーケターを使って、1億5000万円もかけて200万円の営業利益の赤字となるわけだ。

 これがECである。では、赤字を避けるためにはどうすれば良いのだろうか。

 

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