ユニクロやZOZOは知っている シンプルにビジネスを変えるために覚えたい「デジタル化の本質」とは

河合 拓
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マーケティングは「分析の切り口」が全て

 まず、「マーケティング」から考えていきたい。

「デジマ」(デジタルマーケティング)などという言葉がはやり、企業は「データサイエンティスト」と呼ばれる、デジタル・データ分析の専門家を置かねば生きてゆけない、などといわれていたのは記憶に新しい。しかし、よく考えればおかしな話だ。マーケティングというのは、「分析の切り口」が全てである。

 「分析の切り口」が違っていれば、データなどいかようにも解釈が可能だ。例えば私は、ハンズオン型コンサルタントだから、クライアントと一緒に実務をこなすのだが、当時、ビッグデータ分析と呼ばれるマーケティング企業の最終報告会に参加し、私を含め、参加している人達のほとんどが「居眠り」をしていたのを思い出す。つらつらと、何の仮説もないまま、ただデータを「教科書にのっているフレームワーク(枠組み)」に従って分析し、なんら示唆性のない、次のアクションに繋がらないPowerPointのスライドが100ページ以上も続くのだから、眠るなという方が無理な話である。多変量解析、コンジョイント分析、感度分析、クラスタリングなど、難解な用語が続く。おそらく、参加した人間は「So what ?」と聞きたいのだろうが、事業会社で「仲間を刺す」ことは御法度だ。誰もが居眠りをするしかないのである。聞けば、その部署(マーケティング部門)は、昔から何年も前から、このようになんらアクションに繋がらない調査を繰り返しているという。膨大に消費されたこれらの調査のほとんどはゴミ箱に直行していた。

反面教師にしたい
「本質を見ずに目新しさに飛びつく」愚

 さらに、驚いたのはB2B(企業間取引)企業にデジタル・マーケティングを導入しようというプロジェクトに立ち会ったときだった。おそらく、どこかの本に、「これからはB2Bであってもマーケティングが重要になる」とでも書いてあったのだろう。それをそのまま鵜呑みにし、また、クライアントもなんとなく斬新に聞こえる響きにプロジェクト化に踏み切ったのだろう。本質をみず、目新しさに飛びつく日本人によくある話である。

 しかも、そのプロジェクトで「ペルソナ」(自社の製品を購買してくれる顧客を偶像化してマーケティング戦略を考える手法)という言葉が出てきて、まず驚いた。私はポジティブに、「この企業は、いわゆるB2B2C(一見、企業間取引だが、前工程の企業の先にある一般消費者を見ながらマーケティング戦略を立案する考え方)なのだろう」と考え、前工程が持つべき顧客データを中間流通の当該企業が持つのだろう、と考えたのだが、どうも、そういうわけでもなかった。

 次に「マーケティングの4Pは」と話し始めたところで、「この人達は、なにも考えていないのだ」と悟った。当たり前である。4PのうちのPlaceは、前工程の企業に制約を受け、後工程の本企業になんら自由度はなかったし、Priceにしても、前工程の企業に売り込むことができても、その前工程の企業が自由に上代をつけるのだから、一体、この企業にとって「顧客」とは誰か、というところが見えなかったからだ。

 当然ながら、このプロジェクトは混乱を極め、いわゆるコンサルタントの最後の「伝家の宝刀」である「屁理屈」で、無理矢理因果関係を作って終了した。結果、誰もが何をしてよいか分からないまま役員の鶴の一声で中止となった。理由は、「何が何だかサッパリわからない」からである。

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