コスモス薬品、ゲンキー、クスリのアオキ 日本全国で暴れ回るフード&ドラッグ3社の戦略と実力、影響を徹底解説!

雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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フード&ドラッグ主要3社はいずれも2ケタ増収

 実際、各社の業績は絶好調だ。フード&ドラッグのパイオニア的存在であるコスモス薬品(福岡県/横山英昭社長)の2020年5月期連結業績は、売上高が対前期比12.0%増の6844億円、営業利益は同17.4%増の290億円と大幅な増収・営業増益となった。部門別では食品(同社では『一般食品』の名称で分類)の売上高が4000億円に迫る勢いで、前期からの伸び率は全部門で最高となる114.2%を記録している。

 東海・北陸地方でD g Sを展開するGenky DrugStores(福井県/藤永賢一社長:以下、ゲンキー)は、全店で直営の生鮮売場を展開するほか、生鮮のプロセスセンター(PC)を有するなど、フード&ドラッグ業界の中でもとくに食品強化の姿勢を強く打ち出す企業だ。同社もコロナ禍の需要を食品を中心に大きく取り込み、20年6月期の連結売上高は同19.0%増の1236億円、営業利益は同7.3%増の43億円、既存店売上高は同7.4%増と好調だった。

 同じく北陸を地盤に関西から東北までの広い範囲に店舗網を持ち、一部大型店でコンセッショナリー(コンセ)を活用した生鮮売場をフルラインで展開するクスリのアオキホールディングス(石川県/青木宏憲社長:以下、クスリのアオキHD)も波に乗っている。20年5月期の連結売上高は3001億円(同19.6%増)、営業利益も163億円(同15.6%増)と、積極的な出店戦略も手伝ってとくに売上高は120%近い増収率を示した。

 言わずもがな、こうしたフード&ドラッグの台頭は、SMをはじめとする食品小売業にとっては大きな脅威である。DgSとしての専門性は保ちつつ、食品の品揃えを拡充し強い価格訴求を行い、さらにはSMの絶対的な差別化部門である生鮮の領域も浸食しつつあるフード&ドラッグは、SMと真っ向から競合し得る存在となっているからだ。

 ただ、そのSM各社も軒並み“コロナ特需”に沸いていることもあり、そうした競争環境の厳しさがやや見えづらくなっている側面がある。さらに言えば、そもそもフード&ドラッグのドミナント戦略はまだまだ完成しておらず、SMが本格的な影響を受けるのはこれからだと考えるべきだろう。

 しかし水面下では、コロナ禍においてもフード&ドラッグは高い機動力をもって店舗数を着実に増やしており、SMの周囲には着々と包囲網が築かれている。前述のとおりフード&ドラッグは小商圏で成立する店舗モデル(=SMよりも必要商圏人口が大幅に少ない)であるため、SMは年を経るごとに自店の売上がどんどん削られていくことになるだろう。

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記事執筆者

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2016年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)。

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