新・北海道現象の深層⑯ ニトリvsDCM-かつての「盟友」はなぜ島忠のTOBを競い合ったのか

2020/11/27 05:55
浜中淳(北海道新聞)

DCMの買収条件を変えないという判断
自前出店だったニトリが抱える“別の課題”

TOB価格を変えなかったのは、自分たちの提案が最善だと信じるDCMHDのプライドであり、伝統的な生まじめさの表れでもある
TOB価格を変えなかったのは、自分たちの提案が最善だと信じるDCMHDのプライドであり、伝統的な生まじめさの表れでもある

 それだけにDCMHDとしては、島忠との経営統合は何としても成功させたかったはずです。島忠の売上高はホームセンター業界7位の1535億円(208月期)で、ケーヨーの1076億円(同2月期)を上回っている上、無借金経営で財務基盤も強固。61店のうち55店までを東京、神奈川、埼玉に展開している。島忠がDCMHD傘下に加わり、売上高6000億円のボリュームになれば、カインズに後れをとっているプライベートブランド商品開発でも挽回を期待できます。島忠との水面下の協議を約5カ月間にわたって重ね、満を持して合意を発表したのは、ケーヨーとの統合の頓挫を教訓にしたからでしょう。

 結局、DCMHDは、ニトリHDが名乗りを上げた後も買収条件を変えずに事実上撤退した形になりましたが、これも一貫性のある判断と言えます。DCMHDが設定したTOBの買い付け価格は1株当たり4200円。ニトリHDに対抗するには、少なくとも同社と同じ5500円まで引き上げる必要がありましたが、そんなことをすれば。自らの資産査定の信頼性を否定することになり、DCMHDの株主に説明がつきません。その点は、ケーヨーとの統合を断念した判断からぶれていないのです。「自分たちの提案が最善だと信じるから変えない」というのはDCMHDのプライドであり、当連載の13回目で言及した「伝統の生まじめさ」が発揮されたとも言えるのではないでしょうか。

 これに対し、ニトリHDが島忠の買収に突然乗り出してきたのには、かなりの意外感がありました。M&Aを繰り返してホームセンター業界最大手に上り詰めたDCMHDと違って、ニトリHDはこれまで自力成長路線を取り、M&Aで店舗を増やしたことが一度もなかったからです。

 ニトリHDが自前の店舗展開にこだわってきたのは、似鳥昭雄会長が師と仰ぐ故渥美俊一氏の教えが大きかったはずです。渥美氏が日本に普及させたチェーンストア経営とは「11店以上の標準化された店舗を本部が一元的に運営するシステム」であり、<画期的な経営的効用が生まれてくるのは、標準化された店舗(正しくは商品提供)が200店以上出そろってからのことである>(『チェーンストア経営の目的と現状』p10)。

 似鳥氏は、渥美氏の教えを忠実に守って「標準化された店舗」を自力で増やしてきたわけですが、これには時間がかかります。ニトリHDの200店到達は09年秋なので、創業から42年を要したことになる。企業として成長し、資金力を増すのに従い、出店ペースも急加速した半面、大市場の首都圏では出店適地がどんどん減っているという別の問題に直面しています。

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