流通M&Aの深層 #4 米コンビニを巨額買収するセブン&アイの算段

森田俊一(流通ジャーナリスト)
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「コンビニのラストワンマイル化」

 「電気自動車時代」が到来したときに、ガソリン売上高が全体の5割を占めるセブン&アイの米コンビニ事業が継続的に成長できるかどうかという懸念は生まれて当然だ。そうした声に対し、井阪社長はことあるごとに、「コンビニのラストワンマイル拠点化」を強調している。

 国土が広大な米国は、日本のようにコンビニ店舗がひしめき合っているという状態ではない。だが、逆に言えば、全米に店舗網を張り巡らしているのは、コンビニと外食チェーンくらいしかない。そこで焦点となるのが「コンビニのラストワンマイル拠点化」というわけだ。井阪社長も“インフラ”としてのコンビニ店舗価値を見出したのではないだろうか。

 日本ではコンビニ店舗数が多すぎるうえ、宅配網も張り巡らされている。今のところ、コンビニがラストワンマイル機能を果たすという意見には否定的な見方が多い。しかし、コンビニの密度がそれほど高くない米国では、話はまるで違ってくるというわけだ。

 米EC市場は年々拡大しており、売上高60兆円と巨大市場となっている。にもかかわらず、物流は日本ほど充実しているわけではないと言われている。この先、消費者の自宅に商品を届ける、あるいは商品を保管するといった機能を誰かが担う必要が出てくるだろう。セブン&アイとしては、コンビニ店舗網をラストワンマイルの拠点とすることに商機を見出、2兆円という買収額も高くないとの判断だろうか。

“三の矢”の買収はあるか?

 セブン&アイには、テキサス州で事業を展開する米コンビニチェーン、スノコLP(SunocoLP)の買収で成功を収めた経緯がある。そこで、“二の矢”のスピードウェイ買収である。恐らく米国では、“三の矢”となる買収案件を物色しているとみられている。

 日本ではコンビニ飽和論が囁かれて久しい。しかし米国では、物販だけではなく、前述のようにインフラ的な機能を持たせたコンビニを展開していけば、新たな需要を掘り起こすことは十分に可能であるはずだ。

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