流通M&Aの深層 #4 米コンビニを巨額買収するセブン&アイの算段

森田俊一(流通ジャーナリスト)
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セブン&アイ・ホールディングス(東京都:以下、セブン&アイ)は2020年8月、米国の石油精製会社マラソンペトロリアムのコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド部門「スピードウェイ(Speedway)」を買収すると発表した。突然の、210億ドル(2兆2000億円)にも及ぶ巨額買収の発表は、業界関係者の度肝を抜いた。セブン&アイは米コンビニチェーンのどこに2兆円を超える価値を見出したのだろうか。

7&iHDのロゴ
写真は2016年4月6日に東京都内で撮影された7&iのロゴマーク。(2020年ロイター/Yuya Shino)

群雄割拠の米コンビニ市場に商機あり?

  セブン&アイの井阪社長がかねてこだわっていたことがある。それは、「米国内ではコンビニチェーンの寡占化が進んでいない」という点だ。

  日本のコンビニ市場はセブン-イレブン・ジャパン(東京都)、ファミリーマート(同)、ローソン(同)の3社で市場シェアの9割を占める“超”寡占化状態となっている。

  一方の米コンビニ市場は、セブン&アイの米子会社7-Eleven,Inc.(セブン-イレブン・インク)がトップシェアを握っているものの、スピードウェイを取得してもそのシェアは10%以下と、いまだ多く中小チェーンがひしめく市場が広がる。井阪社長もそこに魅力を感じたのだろう。

 ただ、懸念点もある。スピードウェイの店舗は大半がガソリンスタンド併設型で、給油するために訪れたお客が商品を“ついで買い”することが多い。このため巷間は「時代はガソリン車から変わり、電気自動車の時代がすぐそこのところまで来ている。米国においてガソリンスタンドを併設したコンビニ店舗に将来性はあるのか」(あるコンビニ関係者)と先行きを不安視する声もある。

 加えて、米国のコンビニ店舗は、従前からあまり評判がよくない。商品の魅力が乏しく、強盗をはじめ犯罪も少なくない。そうした状況をセブン&アイ米子会社をはじめとしたコンビニ企業が再構築している段階にある。

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