「+J」の驚異 ユニクロが企む「ファッション領域」獲得戦略

河合 拓
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ユニクロより大幅に高い
「+Jの客単価」が意味すること

9年ぶりに復活した「+J」。オンラインサイトでは13日、サーバーがダウン、掲載商品が次々と完売していった
9年ぶりに復活した「+J」。オンラインサイトでは13日、サーバーがダウン、掲載商品が次々と完売していった

 そしていまや同社は、自らの服を「ライフウエア」と定義し、ユニクロは決して「ディスカウンター」ではないことを公言。その結果、1点で1万円を超えるユニクロ商品が山のようにでてきたことを誰もが感じている。そして、その高単価商品の価値を伝え、きちんと売れているのである。

 実際、私も13日、仕事の合間にストールを買おうと、何度もオンラインストアにアクセスしたのだが、「+J」のカシミヤストールは瞬殺で完売、残ったウールのストールも昼過ぎには完売、夜にはページから消えていた。このテストマーケティングとも言える「+J」の狂乱ぶりは、ファーストリテイリングがいよいよ悲願の「ファッション領域」に牙城を打ち立て、それを強固なものにしたことを意味する。昨日の消費者の狂乱ぶりは、明らかに「ジルサンダーが安く買える」からでなく、「+J」を求めているからだった。

 もちろん私もそうだった。

 実際「ジルサンダーといっても、所詮はユニクロ価格だ」と調子にのって、在庫が余っている商品を無造作にポチっていた私は、総額が2万円後半に達していたことに気づき、一瞬ためらったのだった。

 その時、「ユニクロはディスカウンターではない。圧倒的なコスパで競合を圧倒している、普段着からファッション着、ビジネス着の総合衣料チェーンだ」と私は感服したのである。実際、同社が送ってくる「ブランドブック」は、年間100万円近い服の支出をしている私から見ても「格好良い」。とくに「+J」のそれは、ブランド名を隠して、セレクトショップのものだと言われても、その違いに気づく人がどれだけいるかという完成度の高さだ。重大な事実は、私の昨日の「客単価」が2万円を超えていたこと。これは、下手をしたら百貨店で買う消費者の「客単価」と同じだが、私にとっては「ジルサンダーデザインのカシミア混のニットが1万円ちょっとで手に入れられた喜びの方が大きかった。購入した人の平均単価はわからないが、従来よりも大幅に高かったであろう。この客単価の向上が示唆するところは実に大きい。

 

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