流通M&Aの深層 #2 コスモス薬品の「自力成長主義」

森田俊一(流通ジャーナリスト)
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「店舗年齢の若さ」が競争力に

 コスモス薬品のトップは決算会見の際などに、「M&Aには目もくれず、自力で出店してきた」とコメントしている。その理由の一つが、自ら新店を出店した方がM&Aによる店舗網獲得よりも店舗年齢を若く保てるためだ。

 M&Aで買収先を傘下に収めた企業と自力で出店した企業のあいだには、どうしても店舗年齢に差がでる。店舗年齢を若く保つことは、競争力につながる。老朽化した店舗で買物をするよりも、きれいな店舗で買い物をした方が顧客満足度は高いのは間違いないだろう。店舗年齢の若さは、コスモス薬品の高い競争力の源泉となっていると言っていい。

 また、食品販売もコスモス薬品の強さの1つだ。「コスモス薬品は食品の安売りで集客し、医薬品や化粧品といった高粗利益率の商品を販売している」という話をよく聞く。実際に、同社の食品売上高構成比は57.4%(20年5月期)と業界でも群を抜いて高い。しかしコスモス薬品の本当の強さは、食品販売の強さよりも、前述のような「顧客がストレスなく買物できる」という小売業の普遍の真理があるからではないだろうかと筆者は考える。

 コスモス薬品はドラッグストア業界の尺度と違う尺度を持って、業界3位にまで規模を拡大した。同社は現在もM&Aに否定的な考えを示しており、これから先も買収劇には参戦しないとみられる。M&Aで規模を拡大するか、自前で拡大するか。こればかりは経営トップの経営哲学の違いといえるが、コスモス薬品のやり方は小売業の一つの羅針盤になることは確かだ。

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