ユニクロ世界一、在庫レスストア、C2C、金融主導再編…5つの予言が進行形で的中!アパレル業界でいま起こっていること

河合 拓
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個人間取引でも最大のブランドはユニクロ

 3は、もはや説明の必要すら無いだろう。正確な統計はだされていないが、C2C、いわゆる個人間取引の市場規模は対前年比9.5%増となる1兆7407億円(経済産業省電子商取引に関する市場調査より)と推計されている。しかも、個人間売買の対象として最大のブランドはユニクロであり、そのプラットフォーマーであるメルカリは上場してしまった。そうしたなか、最近は、ようやく売上至上主義から利益率へKPIを変えてゆく企業も増えてきたわけだが、それでも、中には過去から続く大量生産、大量販売のスキームから抜け出せず、循環経済の今でも、素材を「リサイクル原料」にする程度で、「大量販売」を続け、これがサステイナブルだと考えている一部の商社・アパレル企業もいる。

 4についていえば、私の予言は大外れになったことを告白しよう。私は、PLM (Product lifecycle management : 商社業務を自動化するパッケージソフトウエア。ユニクロ以外のアパレルは未だに手作業でものづくりを行っている)を、バリューチェーン全体で活用し、工場、素材・付属メーカー、デジタルセンターハブとなる商社、そして、ブランドホルダーのアパレルとリテーラーの「5キー・エンティティー」(5階層からなるバリューチェーン)が、クラウドに上げられたPLMを共同で活用するということが起きるということだった。

 実際、アジアではこうしたマルチアパレル、マルチベンダーは常識化され、パーツの多いシューズでは標準化ガイドラインができあがっているほどである。日本でも同じ試みがあったが、それぞれの企業が我田引水を主張し、まとまらなくなって崩壊を何度もしている。

 これは、改革を先導するコンサルや事業管理者のリーダーシップが弱いことが原因だ。いや、個別の企業が自社のことを優先するのは必然なのかもしれない。私の提唱するCPFR(バリューチェーン全体が共同で、商品企画を行い、需要予測、そして、商品供給におけるリスクもリターンも分け合うという30年も前のコンセプト)型のバリューチェーンのデジタル化は、中立的な資本政策をとった政府、商社、ファンドなどが、なかば強い強制力をもって推進しなければ、過去から延々と続く「狐と狸の化かしあい」は終わらず、アジアの中の日本の劣後は決定的なものとなるだろう

 初期、私はいくつかの商社に呼ばれコンセプト説明をしたが、彼らは、「話を聞いて理解したつもり」になり、独自でPLM導入を進めた。その結果、私が提唱するCPFR とはほど遠いものとなった。

 ベンダーも、こうした基礎的コンセプトを理解できず、個別最適に走る個別企業にPLMを売り込み、現時点で積年のアパレル産業の課題であるバリューチェーンの統合は、ごく一部の事例を除いて実現できていないという状況になっている。

 正直に告白すれば、30年前、私が商社繊維部門に配属されたとき、私のまわりの商社の人間はアパレルの人達や取引先の人達をやや下に見ていたように思う。どこかで「自分たちは世界を股にかける商社マンだ」と自画自賛していた感覚をもっていた。しかし、今となっては、に、強い危機意識をもち、自らを変革し、AIなどのハイテク知識と情報武装をしはじめているのはアパレル企業の方だ。

 実際、ワールドの鈴木信輝社長は40代で、グローバルコンサルティングファーム出身者だし、周りを見渡せば、社外取締役などに、投資銀行やファンド出身者、コンサルティングファームのパートナークラスの人材などスーパーエリート達を集め、極めて戦略的に事業の未来構想を描いているのはアパレル企業の方であるように思う。

 古い商社は、未だに前工程(商社が売上を上げるアパレル企業)に対して、「いかに利益を多く奪い取るか」を考えている。だから、経営学的に言う「レッドオーシャン」とよばれるフィールドに数社に群がり、まるでトヨタが部品供給メーカーを殺しもしないが、生かしもしないギリギリの状況において利益を上げている状況になっているのだ。 

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