続・VUCA時代の小売と消費のカタチ 第3回:「消費の現場」を応援するソーシャルアクションに学ぶ、願う未来と可能性のカタチ。

堤 藤成  株式会社フェズ クリエイティブ・ディレクター
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Withコロナ時代の行動指針は、PDCAサイクルから、TMJPサイクルへ

ここで改めて今回のソーシャルアクションを振り返って、学んだことを整理したい。変化が激しいWithコロナ時代においては、PDCAサイクルを回すことの限界がきている。前提条件が変わらない中であれば、細かいPDCAを回して改善する事は意味がある。しかし先が見えない中で何がゴールかすらわからない中で走るためには、小さなPDCAを繰り返していてはイノベーションにたどり着けない。そこで今回、小売業など消費の現場で働く方々へ提案したいのが、TMJPサイクルという考え方だ。TMJPサイクルとは、Try(挑戦)、Make(創造)、Jump(越境)、Play(夢中)の頭文字を取ったものだ。

Value(行動基準):TMJPサイクル ×PDCAサイクル

Try_挑戦:まずやってみる。机上の空論より、走りながら企画を磨こう

今回のデザインプロジェクトを推進してきたフェズのデザイナーの山野良介氏が語ってくれたのは「日々変化する中で変わったこと、変えていくことを考え続けていく」ということだ。わからないからこそ、まずはやってみること。ただ机の上で考えているよりも動き出した方が世の中の反応なども見えてきて、圧倒的に早い。

Make_創造:カタチにしよう。いつもプロトタイプに、リスペクトを持とう

TMJPのロゴを制作したアートディレクターの田頭慎太郎氏は、スピードが求められる中、「作家性を出さずに、とにかく早くカタチにすることを心がけた」と語っている。またCMディレクターの中島信也氏は「コロナは自分を見つめ、相手を想う時間。『想像心』と『創造力』を大切に」と語る。そのためにまずは顧客のニーズを想像すること。そして創造力で、形にすること。小売の現場においては「安全な消費」を実現するために消費者の立場を想像した上でカタチにしていくこと。それは棚の配置やPOP、お釣りの受け渡し方法など、様々な現場での工夫をプロトタイプとしてフィードバックをもらうことが大事なのだ。

Jump_越境:仲間を信じて飛べ。逆境の中で越境した知恵を生み出そう

今回業界横断プロジェクトで特に明らかになったのが「越境」の価値だ。コロナ禍とは、自分たちの業界の当たり前が通じない世界に変化したということ。地方創生に取り組むさとのば大学発起人の信岡 良亮は「都会と地域など異なる立場のプレイヤーがプロダクトアウト型でもマーケットイン型でもなく、With Socialという視点で共に目指す未来に向かって手を取り合うべきだ」と語ってくれた。異なる業界や地域の知恵に触れることが、自分たちの常識で凝り固まって業界にブレイクスルーを起こせるのだ。

Play_夢中:ワクワクしよう。楽しむ過程で、仲間の和を広げていこう。

変化にはストレスがかかる。特にコロナ禍では多くの人が不安を抱えている。だからこそ遊び心を持って楽しむことが大切だ。そのワクワクして楽しむ様子を見て、仲間が集まってくる。コロナ禍に独立した関口 照輝氏は「先が見えない時代こそ『好き』がキャリアを切り開く」と語ってくれた。小売の現場はどうしても大変な職場だというイメージがつきまとう。しかしこれからは小売の現場で働く人々が内発的動機を軸に、高いモチベーションでイキイキと働くことこそ、小売業界の未来をつくるヒントになるだろう。このように変化の激しいWithコロナ時代こそ、TMJPサイクルを重視した行動が、消費の現場を元気にするのだ。

TMJP2020プロジェクトに関わったメンバーの一部
TMJP2020プロジェクトに関わったメンバーの一部

競争ではなく共創することで、夢をかなえあう「安全な消費」の経済圏をつくろう

最後にこれからの日本で「安全な消費」をかなえるために、どのようなビジョンを描けば良いだろうか。私は「MADE IN JAPANから、TEAM IN JAPANへ」というキーワードをあげたい。なぜなら高度経済成長期の日本は、企業間の競争によって世界に誇れる安全なブランドをつくってきた。しかし競争では自社のリソースや視点に限界がある。そこで様々な消費の現場でDX(デジタル・トランフォーメーション)が叫ばれてきた。これはつまり自分たちの業界の常識を超えて、異なる領域のプロフェッショナルの協力によってしか、イノベーションは起きないことを意味している。だからこそ競争から共創へと転換する「TEAM IN JAPAN」の精神こそがこれからの日本では重要になってくるはずだ。

「消費の現場」は繋がっている。だからこそ小売業界はこれまでの小売の常識や経験だけで動いていては足元をすくわれる。インフルエンサーのほっさくら氏は「常識を手放せば幸せは見えてくる。そのために、緊急よりも重要なことに取り組もう」と語ってくれた。これまで忙しくて作業に追われがちな現場こそ緊急度ではなく一番重要度の高い本質的な物事と向きあうべき時なのだ。

一方、この事実は小売業界にとって新たな希望でもある。「小売の当たり前」は他の業界では当たり前ではない。小売業界がこれまで膨大な当たり前として築き上げてきた業務オペレーション、接客などのノウハウは、他の業界に応用すれば圧倒的な価値を起こす可能性を秘めている。だから小売業界はこれまで身につけてきた強みを武器に、まず挑戦し、プロトタイプを創造し、他の業界に越境したビジネスを起こすのも良いだろう。もちろん、夢中で楽しむことも忘れずに。

 小売業界に限らず消費の現場で働く人々は、自社のビジョンを磨き、知恵を学び、自己を内省し、強みを掛け合わせた異業種の相手を見つけ、世の中に願い続けること。そうしたステップを通じて、消費の現場がチームとして繋がりイノベーションを起こし、結果的に「安全な消費」の経済圏がカタチになっていく。またプロジェクトの運営を務めた高木 奈津子氏は「様々な現場が繋がり交流することで、互いの挑戦を応援しあえるコミュニティが育っていく」と語った。さぁ、いっしょに消費の現場で団結し「TEAM IN JAPAN」の精神で日本を元気にしていこう。なお次回は消費の現場を応援するソーシャルアクション期間を経て、フェズが現在新たに描く新しい構想についても紹介していきたい。

TMJP2020のステートメント
TMJP2020のステートメント

※注1:VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの頭文字から取られた「先が見えない時代」を象徴するキーワード

*注2:TMJP2020プロジェクトについての詳細はこちら
(消費の現場のプロフェッショナルが語る講義やフェスなどが視聴できます)

前回:「消費の現場」を応援するソーシャルアクションに学ぶ、消費の現場における対話の3つのカタチ

堤 藤成
株式会社フェズ クリエイティブ・ディレクター/PR/コーチ

新卒で電通に入社し、コピーライター、デジタルプランナーとして、様々な小売・メーカーの店頭プロモーションやブランディング、人工知能コピーライタープロジェクトなどの新規事業等を担当。その後マレーシアのELM Graduate Schoolにて、MBA(経営学修士)取得。現在は『「消費」そして「地域」を元気にする。』をミッションに小売業界のデジタル革新を担う株式会社フェズに転職し、クリエイティブ・ディレクションと広報に従事。オランダ在住のリモートワーカーとして、EU圏からアジア圏まで、海外リテイルのトレンドについてもリサーチを進めている。

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