地域土着スーパー「やまと」がなぜ潰れたか 元経営者が語る倒産の「必然」

やまと元社長 小林久
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倒産した理由② 地域の消費者の購買を担保できなかった 

 第2に、地域貢献の旗の下、大手なら手を出さないことまで実行したが、話題にはなっても地域の消費者の購買を担保するものではなかったこと。 「地域土着」などと格好をつけ、メディア受けすることを次々と実行する。「環境問題を牽引してやる!」と意気込んで、家庭生ゴミにお駄賃をつけて回収したり、古新聞・古雑誌、古着や廃油、空ペットボトルやアルミ缶を回収換金して寄付。移動販売もするし、空き店舗にも出店していく。

 店が潰れたと聞けば、そこに乗り込み居抜きで継続。ホームレスも雇用するし、困窮家庭への食品提供の窓口にもなる。暴力団の抗争事件の最中に、甲府市中心街に補助金ももらわず出店し、挙げ句の果てには「不肖の父」に反 して最年少で山梨県の教育委員長様に納まる。これをメディアが放っておくはずがない。

 地方紙・地方局はじめ、全国の新聞やテレビでやまとの活動が紹介され、ドラマや CM、映画ロケでもやまとは頻繁に利用された。人に「あんたは憎まれはしないが、やっかまれるから気をつけろ!」と言われた。そし てたくさんの人から「選挙目当ての行動だ」とも……

店は潰れた書影
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 こうして列挙したもののほとんどは、民間企業は採算が合わないために手を出さない。本来、行政の仕事であるからだ。 「頼まれたら断らない」ではなく、 「頼まれたらうまく断る」のがふつうの経営者である。

 管轄外のことに協力して、大切な従業員の生活を脅かす事態になることだけは絶対に避けなければならない。「きっとお客さんは見ていてくれる。迷ったときにはやまとに買いに来てくれる。すべて赤字のピンチからやまとを救ってくれた地域への恩返しなのだから!」

 その結果といえば……。商品力の弱いやまとのお客さんは高齢者が中心で、競合店が少ない店舗(他に店がない)の利益で他の競合の激しい店の赤字を埋める状態が続いた。地域貢献やメディアへの露出は、一時的な売上アップにはなっても、長くは続かない。

 恩義 だけで買いに来てくれる人は少ない。時代は昭和ではない。近所に安い店やこだわりの店、便利な商業施設はたくさんある。 こんなことばかりしている社長は失格。従業員がかわいそうだ。倒産は必然!

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